カウンセリングの実績から見えてきたもの

私は、年間700〜900件ほどカウンセリングを行っています。
開業当初はそれほど多くなかったのですが、年間500件を超えるようになってからもう7年ほど経っています。

また、AXIAには複数のカウンセラーが在籍していて、私は他のカウンセラーの指導も行っているので、直接的、間接的に対応している全ての相談の件数を合計すると年間1000件を超えています。
そのため、日本のカウンセラーの中でも臨床に触れている時間は多い方ではないかと思います。

上記のような経験の中で、私は感じているカウンセラーとしてとても重要な資質についてお伝えしたいと思います。

カウンセラーに必要な能力

まずは、私がカウンセラーに必要だと思っている能力は下記のとおりです。

  • 傾聴力
    相手の感情を感じつつ話を聴き、言語と非言語から得られる情報を集めることが出来る力です。
  • 共感力
    話を聴くことで相手の話から相手の状況や心情を想像できる力です。
  • 知識力
    クライエントの悩みの解決に必要な知識の量とどんな知識が必要かを感じることのできる力です。
  • 分析力
    話を聴いて、話の内容から明らかなこと、想像できること、必要なこと、今後の展開などを整理して、解決のイメージが描ける力です。
  • 説明力
    クライエントに必要、有益だと思える情報を相手が受け入れやすいタイミングで、わかりやすく伝えることが出来る力です。

私の中には、カウンセリングで、上記のような能力を組み合わせながら行っているという感覚があります。
『今、この力を使っている』と思いながら話を聴いているわけではないですが、どれもおろそかにできないものだという自覚を持ってカウンセリングを行っています。

カウンセラーに欠かせない資質

カウンセリングを行う上で必要な能力の説明を行いましたが、能力とは努力によって向上させることが出来る可能性が大きなものです。
良いカウンセリングを行うためには、上記のような能力を向上させる努力を欠かすことは出来ませんが、質の高いカウンセリングを行うためには欠かせない資質というものがあると感じています。

ちなみに資質とは、その人の持って生まれた性質とその性質をもとに大人になるまでに意識的、無意識的に獲得した才能などのことです。

私が感じているカウンセラーに欠かすことが出来ない資質は、『混沌を受け止めることが出来る力』です。

混沌を受け止めることが出来る力とは、性格、体質、人間関係、環境、成育歴などが複雑に影響し合って生まれている人間の悩みを受け止めることが出来る力です。
人が解決するためにカウンセリングを受けようと思うほどの悩みは、誰もがすぐに思いつくようなアドバイスをするだけで解決するような簡単なものではありません。

悩みというものを作り出している背景には、混沌とした状況が存在していることがほとんどです。
そのため、カウンセラーがクライエントの話を聴いた時に無意識にでも混沌とした状況に対して気持ちが逃げてしまうと、カウンセラーの感情が不安定になったり、話を深く聴くことが出来なかったり、安易なアドバイスをしてしまったり、ということが起きてしまいます。

カウンセラーは、クライエントの悩みを生み出している混沌とした状況を受け止め、その上で問題の本質を見極め、解決のために必要なことが何かを整理することができ、適切なタイミングで分かりやすくクライエントに説明していく力が必要です。

カウンセラーに必要な能力が活かされるには、クライエントが抱えている混沌とした状況を受け止めるということが欠かせないのです。
この資質が弱いほど、そのカウンセラーが解決を援助できる悩みは少ないと感じています。

カウンセリングの実例

実際に私がこれまで指導してきたカウンセラーを見てきても、混沌を受け止める力が弱いカウンセラーほど、複雑な悩みに対して上手く対応できていませんでした。
問題の背景への想像が不十分だったり、アドバイスの内容とタイミングが安易になってしまったり、ということが起きていたのです。

AXIAには、複数のカウンセラーが在籍していますが、私がずっと一緒に働いていけるカウンセラーかどうかを見極めるポイントは、この資質があるかどうかという点です。

カウンセリングは、人の人生に深くかかわる仕事なので、資質が不十分であれば続けることが難しい仕事です。
そして、資質というのは、現時点から伸ばすことが出来ないものではありませんが、ある程度は大人になるまでに備わっているものなので、資質の低い人がカウンセラーを続けることは難しいと感じています。