自分は何もできないと思ってしまう理由
この記事は、理由はわからないが自分に無力感を感じていて、それが人間関係や仕事にも影響しているという状態の背景にある心理的特徴について説明しています。
『自分は何もできない』という思いを持っていて、勉強が上手くいかない、人間関係を築くことができない、仕事でミスをしたということで、自己嫌悪に陥ってしまう人がいます。
このブログを読んでおられる方の中には、自分自身にその傾向があるという方、友達や職場の同僚、家族や恋人がこのような傾向があると思っておられるかも知れません。
上記のような傾向には、万能感というものが大きく影響している可能性があります。
赤ちゃんの時から備わっている万能感
万能感とは、『自分なら何でもできる』という感覚で、人間の成長に伴い変化するものです。
(別のサイトや本などには全能感と表現されていることもありますが、全能感と万能感は同じ意味です。
『自分なら何でもできる』という感覚は、新しいことに挑戦しよう、新しいことを身につけようという意欲にも関わってくるため、人間の成長においてとても重要な感覚です。
生まれたばかりの赤ちゃんは、まだ自分では何もでいないのに強い万能感を持っています。
それは、泣くだけでお母さんが自分の世話を焼いてくれるため、自分の望むことが叶うからです。
そして、望みが叶うのはお母さんのおかげだからではなく、自分の力だと信じているため、この段階では何の疑いもなく『自分なら何でもできる』という感覚を持っていると言えます。
しかし、このころの万能感は、赤ちゃんが成長とともに自分の望みが叶っているのはお母さんの力によるものだと気づくことによって打ち砕かれます。
万能感の回復
万能感は乳児の時に一度打ち砕かれますが、人間が生きていくためには無力感を抱えたままでは支障があるため、年齢を重ねるにつれ万能感は回復します。
そして、子供にとって安心と完全が保たれた環境で、大切に育てられることによって、幼稚園くらいになると『自分なら何でもできる』という感覚をもつようになります。
幼稚園くらいの子供が純粋に大きな夢を持つことができるのも万能感があるからです。
生きていく中でさまざまな体験をするのが人生であり、その体験を乗り越えていくためには、幼稚園くらいの頃は大きな夢が持てるくらい万能感が強くてもいいのです。
万能感の破壊と自己効力感の獲得
しかし、実際は人生には可能なことと不可能なことがあります。
誰にとっても不可能なこともあれば、自分には不可能だけど、他人には可能なこともあります。
人間は努力をすれば成長することができますが、努力によって望む目的が達成できることもあれば、できないこともあるでしょう。
上記のような現実を受け入れながら、たくましく生きていくためには自己効力感が必要となります。
そして自己効力感は、万能感が破壊されるような出来事に遭遇しつつ、そこから自分には何ができるのかを実感していく過程の中で身についていきます。
具体的に説明します。
『自分なら何でもできる』という万能感を持った子供が、親との遊びの中で親に負けるという体験をします。
『自分なら何でもできる』と思っている子供にとって、この結果は受け入れることができないものです。
小さい子供が親とトランプなどのゲームをして、上手くいかない、負けるということで泣いたり、不機嫌になるのはこのためです。
この体験は子供にとって『自分なら何でもできる』という万能感が破壊されたことになります。
でも、子供は成長して、知恵をつけることによってトランプのゲームくらいなら、すぐに親に勝てるようになっていきます。
実際に私も子供が幼稚園の年長の頃には、娘に神経衰弱で勝てなくなりました。
トランプで親に何度も負けて悔しい思いをして、万能感が壊されたけど、ある日勝てるようになった時、自分の力に対する信頼感が高まって自己効力感となります。
万能感が破壊され、現実を受け入れつつも自分の力で課題を克服するという過程で『自分には難しいこともあるけど、努力をすればできるようになることもある』という感覚が身につくのです。
自己効力感が正しく育たなかった場合
自己効力感は親子関係によって育まれていくのですが、親の子供への関わり方によっては自己効力感が十分に育たないまま大人になっていくこともあります。
自己効力感が正しく育たなかった場合、
『自分は何もできない』、『何をやっても上手くいかない』という思い込みを持ってしまいます。
自己効力感が育まれやすいのは、物心がつく前から小学校時代の親子関係なので、自己効力感が持てない育ち方をしてしまった人は、なぜ自分がそうなったのかという自覚はありません。
大人になって残ってしまった幼児的万能感
自己効力感が育たなかった場合でも、人間は生きていくために自分を支える感覚を持っておく必要があります。
そのため、自己効力感を得ることが出来ない場合は万能感を持ったまま大人になります。
社会生活への適応に支障をきたす可能性があっても、自分の心を支えるためには万能感が必要であるため、さまざまな問題を抱えることになっても万能感を手放すことが出来なくなります。
幼児的万能感による影響
- うつ状態になりやすい
- 常に異常なほどの不安感がある
- 特定の何かが不安で、それが気になり生活に支障をきたす
- 過食症や拒食症になる
- 自分に自信が持てずに、物事への取り組む意欲がなくなる
- 学校へ行くのが怖くなり、不登校になる
- 社会に出て、仕事が続かない
- 安定した人間関係が築けない
- 恋愛で、相手への異常なまでの執着と攻撃を繰り返す
- 無謀なことしてでも注目を集めようとする
- 自分の万能感を満たすために誰かを利用しようとする
幼児的万能感を克服するカウンセリング
以上のように、自己効力感が育まれず『自分は何もできない』という感覚を持って生活していると心の多くの問題を生じさせてしまいます。
もし、自分にも当てはまることがあり、改善したいと思っているのであればカウンセリングを活用して下さい。
カウンセリングは、カウンセラーとの関係の中で、この万能感の見直しや再確立をするための時間でもあると言えます。
自分の幼児的万能感が、これまでの生活の中でどのように影響していたかを見つめ直し、その気づきの中から自分の成長の方向を探っていきます。
カウンセラーは、どのようなことを心掛けて生活していけばいいのか、アドバイスをしながら幼児的万能感よりも自己効力感を支えにできるようにサポートします。