ネットリンチというSNSの誹謗中傷

有名人がSNSでたくさんの誹謗中傷を受けたり、時にはそれによって自殺を選んでしまう人もいて、それがニュースなどで報道されていることがあります。
有名人でなくても、中高生の間ではLINEいじめと言われる閉鎖されたグループの中でのいじめが問題になっています。

上記のような現象は、個人を複数の人が攻撃する様や一人の攻撃に便乗する人がいて状況が悪化する様などから『ネットリンチ』とも呼ばれています。

テレビ番組やYouTubeの投稿がきっかけになって攻撃が始まったり、SNS内の発言がきっかけになったり、学生なら学校での出来事がきっかけになるなど、ネットリンチは誰もが対象になってしまう可能性のある現象です。

なぜネットリンチは起きるのか

ネットリンチは、下記のような理由の中でいくつかが重なったが時に起きると感じています。

ネットリンチが起きる4つの理由
  • 匿名性(実名を知られない)であるため大体な発言ができる
  • 閉鎖された状況で特定の人にしか発言を見られることがない
  • 想像力にかけた自分本位な正義感
  • 自尊心の低さや被害者意識

匿名性、閉ざされていることで大胆になる

ネットリンチは、誹謗中傷をする対象者に自分の正義感を振りかざして発言をしてもいい理由を見つけた時に始まります。
お互いの名前もわかっていて、他者の目に触れる状況なら抑えられる思いも、名前を知られることがない、一部の人にしか見られることのない状況だと自分本位な発言をしてしまう人がいます。

このような人は、匿名性がない開かれた場では、相手のことを想像し、配慮をして発言を控えているのではなく、自分の立場を守るために発言を控えている傾向が強いので、自分の存在を特定されない、一部の人にしか知られない状況だと思ったことを発信してしまうのです。

集団心理によって正当化される正義感

一部の人の発言をきっかけに誹謗中傷が広がってくのは、集団心理が働いているためです。
自分自身が感じたことを誰かが発信していると、仲間ができたような感覚に陥ってその人の正義感は正当化されます。
そして、『間違ったものは正すべきだ』という心理から、対象者に対して辛辣な発言、相手の人格を否定するような発言を行うのです。

誹謗中傷の背景にある正義感は、非常に幼稚なものであると感じます。
自分が抱えているストレス、嫉妬心、劣等感などが刺激され、誹謗中傷の対象者に向けるべきではない感情と正義感と混ざり合ったものが発言のエネルギーになっていると感じられるような発言が多いのです。

ネットリンチをする人が抱える心理的特徴

ネットリンチをしている人が発信している内容は、相手を傷つける可能性があったり、名誉棄損や侮辱に当てはまるような内容のものもあります。
ネットの中でもそのような発言をしない人からは問題のある発言に見えても、ネットリンチをしている人達は、自分の思いと同じような発言があると自分の思いが正当化され、発言を向ける対象者に問題があるという思いが正当化に拍車をかけるため、相手の立場や心情を思いやることのない言葉を発してしまいます。

ネットリンチをする人の傾向としては、認知に歪みがある、他人に嫉妬しやすい、劣等感が強い、被害者意識を持ちやすいなどの心理的特徴が感じられます。
ネットリンチが起きる理由は、その対象となる人に問題があるのではなく、対象者をきっかけにして誹謗中傷を行っている側に問題があるのです。

ネットリンチから心を守るための心構え

誰もが標的となる可能性があるネットリンチですが、もし標的になった時に自分の心を守るために必要なことについてまとめてみました。

ネットリンチから自分の心を守るために意識して欲しいこと
  • ネット上で交流する相手を限定する
  • 自分がSNSで情報を発信する対象者や軸を見失わない
  • 自分の自尊心を保てるようにする
  • 誹謗中傷をする相手に問題があると言い聞かせる

ネット上で交流する相手を選ぶ

SNSは、面識のない人とも交流ができるという特徴があり、そこにメリットもありますが、その特徴が誹謗中傷を引き起こしているという側面があります。

SNSは、誰とでもつながりを持てる仕組みである反面、自分からつながりを持つ相手を選ぶこと、相手との交流を一方的に遮断することが可能になっているので遠慮なくその仕組みを使いましょう。
誰とでもつながりを持てるからこそ、つながりを持ちたいという相手の要求を拒否したり、ブロックすることで安全性を保とうという仕組みなので、それを活用することが安全にSNSを利用する1つの方法です。

SNSで情報を発信する対象者を見失わない

SNSの中では、標的となる人の現実での発言や行動が批判の対象となることがありますが、自分のことについて偏った情報しか得ることができない人、自分に対する悪い印象や不満をぶつけたいだけの人、誰かに分乗して自分の憂さ晴らしをしている人からの言葉に左右されないことが大切です。

自分の発言や行動の意味、その影響を受ける人、自分が積み重ねてきたものを他人が安易に評価できるものではないと自分に言い聞かせて、誹謗中傷から自分の尊厳を守りましょう。

自分の自尊心を守る

SNS内で誹謗中傷を受けると自尊心が傷つけられます。
自尊心が傷つけられることが続くと、自分の心の健康を保てなくなってしまい自分自身で自分を傷つけてしまうようなことになってしまうこともあるので、自尊心を守ることが大切だと思います。

自尊心を守る方法はいくつかあると思いますが、SNSの誹謗中傷に関しては自分に向けられている発言は『事実』ではなく『感想』であり、その感想には発言している人の認知の歪みや思い込みが強く反映されていると決めつけるということです。

一言で言うと『知らんがな』という受け止め方がベストかなかと思います。

誹謗中傷する人が問題を抱えている

上記にも書きましたが、心のない誹謗中傷には『知らんがな』という思いで受け流すことができると良くて、その思いは『あなたの抱えている心の問題をぶつけられても困る』ということです。

本来なら、人が発信した情報に対して何か意見を言いたくなる時に、相手に対して批判的な表現をしようとする時は、
『なぜ自分はこんなことを伝えたいと感じているのか』 と自己洞察をしてほしいのですが、自分の正義感に正当性があると勘違いしている人にはそれができません。
この点だけを捉えても問題を抱ええいると言えます。

偏った価値観、思い込み、嫉妬心、劣等感は、程度を問わなければ、誰の心の中にもあると思いますが、それを認めずに正当化して人を批判するということは誰もが行うことではありません。
それができてしまうという点が大きな問題点なので、自分の心の問題を棚上げして、自分の発言には正当性があると思って人を傷つけるようなことを発信してしまう人は、見直さなければならない問題を抱えています。

誹謗中傷を受けた時、内容によっては受け止めなければと思ってしまう時もあるかもしれませんが、匿名で相手の立場も考えない礼儀を欠いた発言は無視しても良いと思います。

心を守る方法は受け取る情報を選ぶこと

ネットの中で行われる誹謗中傷は、批判の標的になっている人の発言や行動がきっかけになっている場合、『自分も悪かった』と思ってしまい、それが過剰に誹謗中傷を真正面から受け止めてしまうきっかけになることがあります。

誰にでも反省すべき言動や修正すべき言動はあると思いますが、無責任な誹謗中傷を真に受ける必要はありません。
自分に対して責任を持って進言してくれる人の言葉に耳を傾ければいいのです。

自分の何かを見直さなければならない時は、自分と以前から関係性があり、言葉を選んで意見を言ってくれる人の話に耳を傾ければ良いと思います。
相手に望ましい方法を伝えるアドバイス、行動を改めるために伝える苦言は、信頼関係がある人から聴くからこそ受け入れることができるのです。
信頼関係のないSNSの中の人からの言葉は、どんな内容でも受け流しておいた方が安全です。

誹謗中傷と苦言は違う

歪んだ正義感で自分を正当化し、感情に任せて人を傷つける誹謗中傷と相手のためを思って言いにくいことを言葉にして伝える苦言とは明らかに違うものです。
その違いが判らずに相手に誹謗中傷を浴びせる人の言葉は、自分がその言葉を言われるきっかけを作っていたとしても受け止める必要はありません。

SNSなどによって自分の言葉を簡単に他人に届けることができる時代だからこそ、それを使う人の心構えが必要になっていると思います。
本当は、誹謗中傷をしている人にこそ正しい心構えを持って欲しいのですが、誹謗中傷を受けた時に深刻なダメージを受けないための心構えを作っておく
必要があります。

ネット社会での自己防衛の心構えとして参考にしていただければと思います。