プロカウンセラーの再現性と理論

カウンセリングという専門技術を習得するにあたって理論を学ぶことは大切です。
理論を知らなくてもカウンセリングのようなコミュニケーションができる人もいて、
そういう人を見ていると『すごいな』と感心するのですが、どんな職業でもプロと
して必要な要素の一つは再現性です。

再現性とは、一つの行動を何度行っても同じような精度、強さ、質で行える力で、
プロとしてサービスを提供するのであれば、技術レベルが高いだけでなく再現性
がなければプロであり続けることは難しいと言えます。

そして、その再現性の土台となるものが理論です。
自分の行っていることについて感覚だけでなく、文章化して論理的に説明できる
ものが理論です。
その理論をいくつか説明します。

カウンセリングの三原則

1つ目はカウンセリングの三原則です。
これは来談者中心療法を提唱したカール・ロジャーズが重視した考え方です。
私はカウンセリングは、蔵会陰とを援助するためのはクライエントの話と
話の中に含まれるさまざまな情報こそが重要で、それを聴くことが出来なけ
れば、提案やアドバイスもクライエントのためにはならないことがあると
考えていて、この三原則を大切だと思っています。

自己一致

これはカウンセラーが、自分の気持ちと正直に向き合える事が出来ていて、自分の
感情の把握や考え方の確認ができていて、揺るがない姿勢でカウンセリングの場に
いるか、ということです。
私は3つの条件の中でもこの自己一致が最も重要だと考えています。

無条件の肯定的関心と尊重

これはクライエントのあるがままを受け入れ、関心を持ち尊重するということです。
これはとても重要ですが、その反面とても難しくカウンセラーがクライエントの話
を素直に聴き、どれだけ深く理解できるかがこの態度を成立させる条件と考えて
います。
クライエントの話を先入観をもたず、クライエントの体験と感じたことを尊重
しようという姿勢が大切なのです。

共感的理解

クライエントの体験に寄り添い、その体験をクライエントが感じたように感じ取る
ことを言います。
混同しています人もいますが、共感は同情とは違います。
あくまでクライエントの体験として、その体験を感じ理解することが大切で、
クライエントが悲しんでるかといって、自分も同じ気分になりその感情に飲み込ま
れてははいけないのです。
これも無条件の肯定的関心と尊重と同じで、カウンセラーの傾聴能力が重要です。

カウンセリングの再現性を高める3つの違い

カウンセラーは、自分の行っている行為が本当にカウンセリングとして成立する
のかということを検証しながら話を聴けないといけません。
クライエントの話に集中しつつ、自分の行為に対するチェックも必要になります。
そのチェック基準として3つの違いについて説明します。

『聞く』と『聴く』の違いとは?

『聞く』というのは、自分に入ってくる情報をただ聞くことです。
それに対して『聴く』は、相手をよく見て、言葉からだけでなく表情やしぐさから
も情報を得ようという姿勢、そして相手の話に対して想像力を働かせたり、話を
聴いている自分の感情を観察したりしながら聴くことです。

カウンセリングでは、カウンセラーは当然『聴く』という姿勢で話を聴きます。
『聴く』ことがある程度は無意識にでもできるほどに自分に定着しておくことが
プロのカウンセラーとして必要だと思います。
また、プライベートなので、『聴く』必要のない時は、『聞く』に意識的に切り
変えができるのもプロの技術であり、カウンセラーとして自分を休ませるために
必要なことだと考えています。

『同情』と『共感』の違い

『同情』は、話を聴いていると相手のことをかわいそうに思ったり、憐れみを
感じたりすることで、いつのまにか自分の感情も相手の悲しみや苦悩を自分の
ことのように感じる状態になることです。

それに対して『共感』は、相手の話を聴いて喜びや悲しみ、苦悩の程度などを
相手の話として客観的に受け止めつつ、相手の事情、心情、環境などをありあり
と想像することです。

『共感』は、相手の話をしっかりと受け止めつつも、自分の中に生まれる疑問
や不明点に対しても意識を向けることができている状態なので、話を聴いた上
で自分がどのように対応するのか冷静に考えられる状態にあります。

『答える』と『応える』の違い

『答える』というのは、相手の質問に対して明確な答えを返す行為ですが、
『応える』は、相手の言葉を聴いて、その背景にある感情に対して応じる行為
のことを言います。

カウンセリングでは、クライエントとの対話の中でどちらが必要かを判断して
使い分けることが出来なければなりません。
『答える』必要がある時に知識不足で応えることができず、明らかに明確な
答えを求めている人に対して不適切に応えてしまうようではいけません。
また『応える』必要がある時には、いくら正しい情報を相手に伝えたとしても
応えて欲しいと思っている人には伝わらないことがあるということも知って
おく必要があります。

『答える』と『応える』のどちらを使えばいいかわかりやすい時もありますが、
迷う場面もカウンセリングの中にはあります。
そのため、『答える』と『応える』の使い分けは、カウンセラーの感性と経験
が問われる場面でもあるのです。

まとめ

プロのカウンセラーにとってもカウンセリングを同じレベルのサービスとして提供
し続けることは決して簡単ではありません。
だからこそ、自分のカウンセリングの技術を感性と経験だけに頼るのではなく、
理論的に説明できるように基礎から理論を学ぶことが大切です。

このページに書いてあることは、カウンセリングでは当たり前のことかもしれま
せんが、プロとして非凡になるためには、当たり前のことを誰よりも丁寧に行う
ことができる必要があります。
そのためにもカウンセリングの基礎的な考え方、知識を大切にしてほしいと思い
ます。