心因という心の病の原因

カウンセリングを行う時は、クライエントが抱えている悩みがどんな心因によって生じているかという視点を持って話を聴くことが大切だと思っています。
心因とは、今の心の状態を生み出している原因であり、心の病の場合はネガティブな感情や症状の原因が心因となります。


うつやパニック障害、不安神経症、対人恐怖症、などの心の病、人間関係での不安、出来事など、リストカット、拒食や過食、パチンコや恋愛依存、痴漢などの行動の問題は、心が何らかのストレスに耐えられなくなっているというサインです。

人間が何らかの刺激を受けて、その刺激に対して心の中で何らかの評価を下すことによってストレスが生じます。
この過程で、刺激に対して行う評価、その評価をする理由、そして最終的に受けたストレスなどを含めて心因とみなすことができます。

心因とは、ストレスの質や大きさに影響を与える心理的要因であるため、見極めて適切なアプローチを行っていくことがカウンセラーに求められるのです。

現実心因と深層心因

心の病や人間関係の問題、行動の問題など、心の悩みの原因を心因と言います。
心因とはわかりやすく言うとストレスのことで、何らかのストレスによって精神、身体、行動のいずれかに異常が生じてしまうのです。

カウンセリングでは、その人の悩みの原因である心因が何なのかということを考えて話を聴くのですが、心因は大きく分けると2つのタイプがあります。

それは現実心因深層心因です。

現実心因と心の病

現実心因は、人間関係や仕事など日常の中で生まれるストレスで、ある程度自覚できているもののことをいいます。
例えば、誰との人間関係で悩んでいるか判断できる、仕事のどんな要素が負担になっているか判断できる、試験や試合などが近づいていてプレッシャーを感じているなどは、現実の出来事によって生じているストレスなので、現実心因であると言えます。

現実心因のみによって生まれている悩みは、その心因を生み出している理由がなくなれば悩みもなくなるので、比較的解決しやすい悩みであると言えます。
ただ、何が理由でストレスを抱えているかが分かっても、そのように対処していいのかわからない場合、対処方法は思い浮かぶけど実行することが難しいと感じる場合などはカウンセラーに相談することも1つの手段です。

深層心因と心の病

一方、深層心因は、幼少期にできた心の傷、抑圧している感情、コンプレックスなど、心の深いところにあって自覚できていないもののことをいいます。
例えば、アダルトチルドレンは、この深層心因を抱えていて、その影響が現在にも強く出ている人のことをいいます。
他には、自覚することができていない考え方の癖、自覚することができていても変えることが難しい認知や思考パターンも深層心因であると言えます。

深層心因によって生まれている悩みは、自分が辛い、苦しいという思いを持っていることは自覚できていても、その理由がよくわからないため解決方法もわからないということが心理的な負担になります。
深層心因に関しては、複雑であるほどカウンセラーでなければ明確にすることが難しいと言えます。

カウンセラーは、クライエントの話を聴きながら、その人の悩みの原因が現実心因なのか深層心因なのか、またはそれらが複雑に絡み合っているのかを見分けて、悩みの改善のためのアプローチを考えることが必要です。

心因を見極めがカウンセリングの行方を左右する

カウンセリングでは、心因を正確に見極めることができるほどアプローチ方法を判断しやすくなるので、心因の特定は悩みの解決に向かう可能性を高くしてくれます。
心因を見極める力をつけるためには、臨床経験を積むことは必要ですが、それ以上に知識を得るために勉強を続けることが大切だと考えています。

知識を持っているからこそカウンセリングの中で心因の見極めがしやすくなり、その経験がさらに難しい心因の見極めができる力になっていくと感じているからです。
知識が無いまま臨床を繰り返していても、その経験の質は低くなってしまいます。カウンセラーにとっての知識は、クライエントの話を聴く際に想像力、分析力を高めてくれます。

カウンセラーがどのように心因を把握するかということがカウンセリングの行方を左右するので、勉強を続けることが大切なのです。