この記事では、公認心理師の視点から精神科受診のために知っておいた方が良いと思うことをお伝えします。
心の状態に不調を感じた人が精神科を受診する場合に正しい認識を持っていないことで期待外れだと感じてしまったり、過度に精神科を受診することを拒否してしまうのは、改善の妨げになってしまうので下記に書いてあることを参考にしていただければと思っております。

精神科医はカウンセリングをしてくれない

精神科と聴くとカウンセラーのようにお医者さんが話を聴いてくれるというイメージを持っておられる方もおられますが、精神科医が話を聴く行為を問診と言います。
カウンセリングのように、話したいことを聴いてくれるのではなく、問診はお医者さんが聞きたいことを聴く行為だと思って頂いて良いと思います。

どのような科のお医者さんに掛かっても問診というものは行われます。
これは精神科でも行われますが、心の病で精神科を訪れる人は精神科医は問診を何のために行っているのかということを理解しておくことが大切です。

問診はカウンセリングではない

精神科医の行う問診とカウンセラーが行うカウンセリングは、話を聴くという表面上の行為は同じですが、目的に大きな違いがあります。
これが精神科を受診する際に知っておくべき重要なポイントです。

カウンセリングは、心理的なアプローチであり、話を聴くことがストレスや孤独感の緩和、心の安定という効果をもたらし、悩みの改善につながることもあれば、どのようなアドバイスをすればいいかという判断をするための情報収集にもなります。

これに対して問診は、どのような薬を処方することが患者さんの病状を緩和することにつながるのかを判断するための手掛かりを得るための行為です。

精神科医に伝えるべきこと

問診が薬を処方するための手掛かりを得るために行われているということを考えると、精神科を受診した際に精神科医に伝えるべきことが分かって来ると思います。

それは、下記のような内容です。

精神科医に伝えるべきこと
  • どのような症状を抱えているのか
  • 自分が抱えている症状の程度
  • いつから症状が表れるようになったのか
  • どんな時に症状が出る、もしくは強くなるのか
  • 症状が表れるようになったきっかけはあるのか

これらの内容を伝えると精神科医はどのような薬をどれくらい出せばいいのか判断しやすくなります。
もし、その他に聴きたいことがあれば、精神科医の方から質問をしてくれるでしょう。

精神科を受診する上で大切なことは、感情をケアして欲しい、自分の辛さや苦しさをして欲しいということを一番の目的にしないことです。
自分の病状に関する情報をできるだけ正確に伝えて、治療のために適した薬を必要な分だけもらうことが、精神科を受診する上での目的です。

もちろん、良い精神科医は優しく、理解を持って接してくれると思いますし、傾聴も交えながら話を聴いてくれますが、心の病で困っている人への根本的な役割と目的が、カウンセラーとは異なるということを理解しておいて頂いた方が良いかと思います。

精神科の病院にもカウンセラーはいる

多くの精神科、メンタルクリニックには、公認心理師か臨床心理士を持ったカウンセラーがいます。
医師がカウンセリングを行うことは少ないですが、病院では所属しているカウンセラーがカウンセリングや心理検査を担当しています。
精神科に通っているけどカウンセリングを受けたいという場合は、主治医にその意思を伝えてみてください。
その病院でのカウンセリングを提案されるか、場合によっては信頼できるカウンセリングルームを紹介してもらえます。

こんな精神科医は危ない!

精神科を受診すると決めた後、どこの病院に行くのかを判断する必要が出てきますが、ただ近いからという理由だけで病院を選ぶのではなく、最初に通った時に今後も安心して通えそうかどうかを判断して欲しいと思います。

どのような職業でも、研鑽を重ねしっかりとした知識と技術を持って仕事をしている人もいれば、努力を怠って不十分な仕事しかできない人、不誠実な仕事をする人はいるので、そんな精神科医の元に通い続けることがないように下記の点に注意して欲しいと思います。

通わない方が良い精神科医
  • 初診で十分に話を聴かずに診断をする(診察時間5分以内)
  • 診察中に患者を診ずにパソコンや書類ばかり見ている
  • 高圧的、威圧的な態度で、言葉使いも荒っぽい
  • 初診の後に4種類以上の薬を出すが、説明が不十分
  • 質問をすると不機嫌になる、答えてくれない
  • 薬以外の治療に対する知識がない、偏見を持っている

精神科医の役割は、脳の働きを正常に戻す、またはその影響で生じている心の問題をケアすることです。
しかし、はっきりと目で確認できる病気に対するアプローチではないため、患者さんから聴く話、表情やしぐさといった患者さんの様子から病気の手掛かりをつかみ、治療をしていかなければなりません。

それなのに話は聴かない、患者を診ない、安易な判断や雑な処方をするということは危険極まりない行為です。
精神科を受診する必要のある人は、精神科医は心の病で困っている人に対して何をしてくれる人か、どのような精神科医に診てもらうべきかを良く頭に入れて精神科を訪れて欲しいと思います。

精神科医と上手く付き合って下さい

精神科医でもカウンセラーでも、その職業自体に問題があるのではなく、その中に良い精神科医やカウンセラーもいれば、そうでない人もいるという認識を持って、自分の今の状態ならどの専門家に相談すればいいのか判断して頂ければと思います。

精神科医とは何かを知っていれば、病院に行って伝えるべきことを簡潔に伝えることができ、適切な薬を処方してもらったり、アドバイスをしてもらうことができます。

話を聴いてもらって心の状態を落ちつけたいという場合は、精神科医ではなくカウンセラーを頼って頂ければ、精神科医に話をしてしっかりと話を聴いてもらえないという不満を持つこともないでしょう。

精神科医とはどんな役割で何をしてくれるのか、精神科医に話すべきことは何なのかということを意識して受診して頂ければ、良い関係を築いて治療を受けることができると思います。

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