
性犯罪が増える背景にある否認の心理
性犯罪加害者の家族は、「なぜ性犯罪を始めたのか?」「また再犯をするのではないか?」と頭を悩ませることになります。
本当は、性犯罪を犯した本人が自分の行動に疑問を持ち、再犯の恐れに目を背けずに生活をしなければならないのですが、性犯罪加害者の多くは不都合なことから目を背けていて、それが再犯の可能性を高めています。
このような心理を『否認の心理』と言いますが、今回の記事はこの否認の心理がどのようなきっかけと結びついて性犯罪を始めてしまうのかということ、再犯をしないために何をすればいいのかということをお伝えしたいと思います。
増え続ける性犯罪の認知件数
警察統計や犯罪白書などの公開資料では、強制性交等、強制わいせつに関しても2023年には認知件数、検挙数ともに大幅に増えています。
まだ正式な統計は取れていないようですが、2024年、2025年も数は増えているようです。(ウィキペディアより)
この背景には、2023年の刑法改正が影響していて、これまで処罰対象になりにくかった行為を犯罪行為として取り扱うようになったという変化があります。
刑法の改正は、処罰対象になりにくかった行動をしていて「自分は犯罪を犯していない」と否認の心理で自分の行動を評価していた人達が逮捕され、刑罰をさせられるようになったのです。
当社には、性犯罪をして二度と過ちを犯さないためにカウンセリングを受けに来られている人が多く、2026年時点で約1000人くらいの相談に対応しています。
1000人ほどの人の話を聴いていると性犯罪を始めたきっかけはいくつかの共通点があることがわかっています。
これについて知ることは、性犯罪加害者が性犯罪を止めるためにも、改善を支える家族にとっても必要なことです。
なぜ性犯罪を始めてしまったのか?
性犯罪加害者が性犯罪を始めるきっかけには否認の心理が強く影響しています。
逮捕される、刑罰を受ける、相手に多大な迷惑を掛けるということはわかっているはずなのに、性犯罪加害者はその事実から目を背けて行動に移しています。
否認の心理は、性犯罪につながるきっかけが生じた時、そのきっかけを犯罪にまでつなげてしまう影響力があります。
性犯罪を始めるきっかけとなるモデリング
痴漢、盗撮、強姦などの性犯罪を行った人に多く見られる共通点の1つはモデリングです。
別の人が性犯罪を行っている現場を見たことがきっかけであったり、アダルト動画で性犯罪を題材にしたものを何度も見ていたことによって自分もできるという認知の歪みを持ったことが性犯罪につながるというものです。
モデリングは、行為者が罰せされない、むしろ成功体験を得ているという2つの条件が含まれることで成立すると言われています。
他人が性犯罪を行っている場面もアダルト動画も、2つの条件が満たされていると見た人に「自分もやってみたい」「自分もできるのではないか」という気持ちを生み、そこに否認の心理が加わって「バレずにできそうだからやってみよう」という気持ちにつながってしまいます。
他人が性犯罪を行っている現場を見ている状態は、自分にはその行為を見つけられているという視点が抜け落ちています。
アダルト動画については、フィクションなのでバレないような設定で撮影されているという視点が抜けています。
これは否認の心理が強く働いていると言える点です。
痴漢を始めるきっかけと自己正当化
痴漢を始めた人に見られる共通点の1つには、満員電車に乗ったら偶然自分の近くにいた人のお尻に手が触れた時、相手が何も言わなかったから「触っても大丈夫だ」と思って、その後は意図的に触るようになったという流れがあります。
この心理過程は、「お尻に手が当たっているのに反応がないということは、嫌がっていないんだ」という否認の心理の働きによって起きる自己正当化と言えます。
また偶発的接触-反応がないー恋の接触へ、というエスカレーションという逸脱行動のモデルであるとも言えます。
偶発的接触があっても痴漢に発展しない人は、「偶然でも女性は嫌な思いをするはずだ」「痴漢に間違われる可能性がある」といった現実的な思考が働いていますが、痴漢を繰り返すようになる人は否認の心理によって自分にとって都合の良い解釈をします。
盗撮を始めるきっかけと技術的アフォーダンス
事実として、スマホの所有者が大幅に増えた2014年あたりから盗撮の検挙件数も増えています。
これはスマホを持った人の中に「スマホならバレないように盗撮ができるかもしれない」と思った人がいることの表れだと推測できます。
スマホの普及と盗撮の検挙件数の増加は、技術的アフォーダンスといってテクノロジーが1つの行動を可能にする、またはやりやすくすることを表した現象で説明ができます。
携帯電話にカメラ機能が加わったことでカメラの常時携帯と小型化が生じ、ガラケーからスマホへの移行によって高性能のカメラを持てるようになったことで「盗撮ができるかもしれない」と思った人が増えたと考えられます。
しかし、本来なら技術的に可能かどうかではなく、倫理的、法律的な側面から盗撮は行うべきではない行動なのですが、そこにも否認の心理がはたらき「バレないだろう」「相手に接触しないので傷つけない」といった認知の歪みが盗撮につながっています。
カウンセリングで性犯罪をした事実を振り返る
カウンセリングが性犯罪の再犯防止につながる理由の1つは、否認の心理によって目を背けていた性犯罪の始まり、継続してきた中で生じていた気持ちなどを振り返り、事実を1つひとつ認めていく機会になるという点です。
性犯罪を始めた経緯を自覚する
カウンセリングでは、性犯罪を始めた時の話を確認しています。
長く性犯罪を続けてきた人ほど、すぐに始めた時のことを思い出すことが難しいですが、大切なのは振り返ろうとすることです。
性犯罪を続けている人は、罪の意識を和らげるために事実を都合よく解釈している傾向があるので、話を聴きながら矛盾点があれば追及して、できるだけ正確な心理描写や行動を確認していきます。
そうすることでまた衝動が出て行動を起こしそうになった時、自分の心身の働きを速めに察知して対処ができるようになるからです。
否認の心理を自覚して改める
性犯罪をしている人は、否認の心理が強い傾向にあります。
さまざまな事実や自分の心理描写を都合よく解釈して、自分の罪の意識を和らげようとしています。
否認の心理による事実の誤認が強いほど再犯の可能性は高くなってしまうので、カウンセリングではどのような事実の誤認を行っていたかを自覚して、正しい認識の確立を目指します。
否認の心理を軽減させる対話は日常の中で行うことは難しいので、カウンセリングを受ける必要性があるのです。
性犯罪の再犯防止に詳しいカウンセラー
性犯罪の再犯防止のためのカウンセリングは、性犯罪加害者と向き合うというカウンセラーの覚悟と実際に性犯罪加害者の更生を支援してきた経験が重要になります。
カウンセリングで対応している相談は、どれもそれなりの難しさはありますが、性犯罪加害者へのカウンセリングは犯罪というものに対するカウンセラーの捉え方が少なからず影響します。
そのため性犯罪というものに対して、善悪という二極的な観点ではなく、さまざまな視点から多角的に性犯罪を捉えて対話ができる力が求められます。
また性犯罪加害者が、再犯をしないように変化していく過程を多く見てきたカウンセラーほど、さまざまなクライエントの状態や状況、カウンセリングの経過にも対応できるため、実績のあるカウンセラーに相談することが望ましいと言えます。
当社の場合は、どのカウンセラーが担当しても担当するカウンセラーからのカウンセリングの進捗を聴きながら指導を行っていく体制が確立されているため、安心して相談していただけます。
性犯罪は、後悔も反省もしているからもう二度とやることはないという発想の人ほど再犯をしている傾向があります。
再犯防止に関して自己流の解釈をするのではなく、性犯罪をしてしまった以上は再犯をしないために専門家に相談に行こうという姿勢で取り組んでください。
性犯罪を止め続けるということは容易なことではありません。
まずカウンセリングを受けることが再犯防止の第一歩です。













