性犯罪を繰り返さないためのリスクの見極め
性犯罪をして再犯をしないためにカウンセリングに通っておられる方、またはこれからカウンセリングを受けようと考えておられる方には知っておいて頂きたいことが、再犯リスクの違いによって共通している性犯罪加害者の特徴についてまとめました。
この内容は、2023年までに1000人以上性犯罪加害者のカウンセリングを担当してきたカウンセラーが、臨床経験をもとにまとめているので性犯罪加害者の更生を支援するカウンセラーに役立てて欲しい内容でもあります。
知識があるからこそリスクに気づくことができる
性犯罪者が再犯をしないためには、一人でいる時にどれだけ自分のストレス状態、性衝動に築いて早いうちから対処できるかということが重要になります。家族やカウンセラーは、それぞれの立場から支援をすることはできても、すべての行動の管理ができるわけではないのどのような状態がリスクが高まっているのかという知識を持っていて、自分がその状態になっている時にそれを認めて対処をする必要があるのです。
再犯をしないための生活を続けていくにあたって、自分は現在どのような状態なのかを受け止めておくことは、性衝動が生じた時の心構えになります。
自分が抱えている再犯リスクを自覚できているからこそ、早い段階で抑止力を掛けることができるからです。
これから性犯罪を止め続けるためにこのページに書いてあることをよくご確認下さい。
そして、書かれている内容にショックを受けたり、受け入れがたかったとしても、自分の現状を受け止めて再犯抑止に取り組んで頂きたいと思います。
また、性犯罪加害者の改善を支援されているご家族の方には、当事者を支える上での参考資料としてこのページを活用して頂ければと思います。
性犯罪の再犯リスクを把握するための視点
このページでは、性犯罪の再犯リスクについて、ハイリスク群、ミドルリスク群、ローリスク群に分けて説明しています。
まず3つのリスクについて確認する前に把握しておいて欲しいことがあります。
それは、リスクが高いから再犯をすると疑うのではなく、リスクが小さいからと言って再犯はしないと安心するのではなく、ただ自分の現在地を自覚するために読んで頂きたいということです。
再犯のハイリスク群
再犯のハイリスク群は、ストレスレベルが高い時に犯行ができると感じた場合に実行する恐れが感じられる人、自分の犯した性犯罪が刑事事件として結審したら再犯のリスクが高まりそうな人です。
再犯の可能性が高い状態の人は以下のような特徴があります。
下記の中でいくつかの項目が当てはまれば、リスクは高いと考えて下さい。
- 少し前に犯行をしていたのに自分は再犯をしないと言い切っている
- カウンセリングを1〜3回で勝手に止める
- カウンセラーに自分の状態を正直に話さない
- カウンセラーに言われた必要な取り組みを行おうとしない
- アダルト動画で性犯罪に関係するものを見続けている
- 女性をみると性犯罪をしたい気分になることがある
- 車に乗ると気性が荒くなる
- アルコール、ギャンブル、スマホなどにも依存している
- 元々、男尊女卑的な考え方が強く、女性に横柄な態度を取る
- 飲食店などで自分が客だからと理不尽なクレームを言う
- 約束を破る、時間を守らないことがよくある
- ストレスレベルの高い環境に身を置き続けている
再犯のミドルリスク群
再犯のミドルリスク群は、カウンセリングを受けている間は再犯のリスクは低いが、カウンセリングの間隔が空いたり、カウンセリングを中断すると再犯のリスクが高まりそうな人です。
再犯の可能性がまだまだ感じられる状態の人は以下のような特徴があります。
下記の中でいくつかの項目が当てはまれば、まだまだ油断はできないと考えて下さい。
- まだ性犯罪をしたいという衝動が出てくることがある
- もうそろそろ再犯をする可能性も小さくなっていると思う
- カウンセリングを10回前後で勝手に止める
- カウンセラーに言いにくいことでも話している
- カウンセラーに話していない重要なことがある
- 条件反射制御法など改善に必要なことが習慣化しない
- 少しなら犯罪に関するアダルト動画を見ても良いと思ってしまう
- 車を運転している時にイライラすることが多い
- 嫌なことがあるとアルコールを飲んで現実逃避をしようとする
- 彼女や妻、両親などの自分の思っていることが言えない
- 職場で不満や仕事の負荷が高まっても我慢している
- 趣味がなく、休日は気分転換が出来ていない
-
自分でできるストレスケアを始めない、中断している
再犯のローリスク群
再犯のローリスク群は、年に2〜3回ほどカウンセリングを受けていれば再犯のリスクは極めて少ないと感じられる人です。
ローリスク群の中には、カウンセリングを受けなくても再犯のリスクが低い人も含まれます。
ただ、ローリスク群の方でもストレスレベルが高くなるとリスクは上昇するので、その時はカウンセリングを受けて頂くことが望ましいと言えます。
再犯の可能性が低い状態の人は以下のような特徴があります。
下記の中でいくつかの項目が当てはまればリスクは低い言えるでしょう。
- 性犯罪をしたい衝動はないが、油断はできないと考えている。
- カウンセリングに定期的に通っている
- カウンセラー自分の状態を詳しく説明している
- 条件反射制御法など再犯抑止につながることを継続している
- 精神状態が安定していて他者へも思いやりを持って接している
- アルコール、ギャンブル、スマホなどへの依存もない
- 本を読むなどして自己成長のための時間を取っている
- 趣味を見つけて定期的に気分転換をしている
- 仕事や家庭で自分の役割に意義を感じて生活している
- 職場や家庭で信頼を得られていることが感じられる
性犯罪の抑止は現実を受け入れることから始まる
上記のリスク別の特徴を見て自分がどの位置にいるかある程度自覚できたのではないかと思います。
今後、性犯罪を止め続けるためには、自分が抱えているリスクを受け入れ、その地点から自己管理によって性犯罪を抑止できるように取り組んでいくことが大切です。
ハイリスク群、ミドルリスク群にいる人たちに必要な心構え
ハイリスク群やミドルリスク群にいる人は、否認の心理によって自分の抱えているリスクを否認しないことが重要です。自分が抱えている再犯リスクに気づいた時にそれを認めることができていれば対処が可能となります。
しかし、性犯罪を含む依存症を克服するための大きな壁が否認の心理を弱めていくことです。
カウンセリングを受ける目的の一つは、カウンセラーの指摘を受けながら否認の心理を弱めることなので、カウンセリングと日常生活の自己管理を並行していくことがリスク低下のための必要な取り組みです。
ハイリスク群やミドルリスク群にいるからと言って、必ず再犯をするわけではありません。
努力によってローリスク群の人に該当する特徴に近づいていくことでリスクは軽減していくことができます。
このページは、性犯罪を止め続けるためにどこを目指せばいいかを分かりやすくするために書いたものなので、書かれている内容を読んで今いる自分の立ち位置から性犯罪の抑止力を高める取り組みをして頂きたいと思います。
ローリスク群にいる人たちに必要な心構え
ローリスク群に該当しているからと言って油断できるわけではありません。実際にローリスクに該当する状態だった人でも、生活の中でストレスレベルが高まっているのにカウンセリングを受けずに生活をしていて段々と性犯罪に近づいてしまっていたという事例もあります。
例えば、お酒の量が増えたり、イライラして他人に当たることや運転が荒くなることが増えたり、買い物やギャンブルなどでお金を使い込んでいたり、趣味に時間を掛けなくなっていたりなどです。
人によってこれらのどの異常が表れるかは個人差がありますが、どれも性犯罪の抑止力が低下していることの現れです。
このような状態になっている時は、すぐにカウンセリングの予約を取って頂きたいと思います。
性犯罪を止め続ける意識を継続させる方法
性犯罪の加害者となりカウンセリングを受け始めた人も、経過とともにカウンセリングの頻度を減らしていきます。
ローリスク群になってもカウンセリングを受け続ける人もいますが、その時点でカウンセリングを卒業する人も少なくありません。
そんな中で、カウンセリングから離れているうちに再犯はしていないけどリスクが感じられる状態になっていた人もいれば、お酒を飲んだ時に再犯をしてしまったという人もおられます。
性犯罪を抑止し続けるためには、自分の生活の中でここのポイントが崩れてきたら即カウンセリングを受けるという基準を設けることをお勧めします。
例えば、お酒の量が増えてきた時、イライラすることが増えてきた時、車の運転が荒くなってきた時、家族との会話する意欲が少なくなってきた時、仕事に行きたくない気持ちが出てきた時、明らかにストレスになる人間関係がある時などです。
これまで多くの方の相談を受けていて、上記のような時にカウンセリングを受けることなく過ごしていて再犯をしたというケースは見受けられるので、自分にこれらの傾向が生じた時はすぐにカウンセリングを受けて頂きたいと思います。