この記事は、性犯罪加害者がなぜ再犯をしてしまうのかということについて心理的な特徴を紹介しています。
もし、この記事に「自分はなぜ性犯罪を止めることができないのか」、「なぜ夫は性犯罪を繰り返してえしまうのだろう」という疑問を持って検索をして辿り着かれたのなら、内容をよく読んでいただきたいと思います。
再犯を防ぐためには、ここに書かれていることを受け止めた上で対策をしてく必要があるからです。
性犯罪を止めることができない人には、性犯罪を繰り返す人と繰り返さない人の違いを知り、再犯をしない人生を歩む手掛かりとして活用してください。
性犯罪を繰り返す人の否認の心理
当オフィスには、性犯罪をしてしまったという人からの相談依頼が毎年100件以上入ります。(2023年3月時点)
その中の7割ほどはカウンセリングを継続し、3割ほどはすぐに来なくなってしまいます。
性犯罪を繰り返す人は、否認の心理という自分の問題点や性癖の歪み、ストレスなどを認めない心理的特徴を持っていて、それが強いほど再犯のリスクは高いと言えます。
否認の心理が強く再犯のリスクが高い人達
すぐにカウンセリングに来なくなる人は、「反省や後悔をしているから止めることができる」、「自分の意思で止めれると思う」という発言をする傾向があります。
性犯罪をしてしまう理由や再犯をする人がいる理由を説明しても、理解をしているふりをして心の中では上記のように思っていることが感じられます。
カウンセリングを継続できない人が再犯をすると、当オフィスに警察から連絡が入ることがあるのですが、その電話で1、2回ほどしか来なかった人が再犯をしたことを知ります。
すぐにカウンセリングに来なくなる人の中で再犯をしてしまう人というのは、否認の心理が非常に強いと言えます。
一度は弱まった否認の心理が高まる人達
カウンセリングを継続する7割の人の中で、継続しているうちに不適切な性衝動が弱まったり、ストレスが改善されて精神状態が安定してきたら油断をして自己判断でカウンセリングを止めてしまう人がおられます。
この段階は、ただ精神状態が安定しただけであって性犯罪を止め続けるための人格形成が進んだ段階ではありません。
しかし、油断をしてカウンセリングを止めてから、少しずつ否認の心理が高まってしまい再犯をしてしまう人がおられます。
年間に数人は、「再犯をして逮捕されました。再度カウンセリングを受けたいと思っています。」とカウンセリングを再開されるのですが、経緯を確認するとカウンセリングを受けない生活の中で否認の心理が徐々に高まっていたことが良くわかります。
性犯罪の再犯が起きる1つの理由は、性犯罪に対する認識の甘さ、自分の心理的な能力への過信などの否認の心理が十分に弱まっていないことです。
カウンセリングでは、なぜ性犯罪は再犯が起きやすいのかということをしっかりと説明するのですが、再犯の可能性があることを認めない人、ある程度カウンセリングを受けると安心して再犯のリスクを甘く見てしまう人がいます。
性犯罪をしないためのは、性犯罪の問題点をしっかりと理解できるようになるまで知識を学ぶこと、そして自分自身の性格傾向やストレス耐性などをよく理解することなどが必要で、そのためにもカウンセリングを継続することが必要なのです。
再犯を引き起こす回路と性犯罪を止める条件
性犯罪をしたことがあるという人は、脳内に一定の刺激を受けると性衝動が高まり、性犯罪行為を行ってしまうという回路ができてしまっています。
この回路が脳内にあることは、再犯が起きるリスク要因の1つです。
その回路があると『もう性犯罪はしない』と思っていても、衝動が高まると自分に言い訳をして犯罪行為を繰り返してしまう可能性が高くなるため、カウンセリングを中断している間に再犯をしてしまうということも起きるのです。
さらに刺激を受けて回路が働き、性犯罪となる行為をしたくなった時、悪いことだと分っていても行動してしまうのは、否認の心理が関係しています。
否認の心理が働くと、不適切な行為だとわかっている行為を行うため、心の中で言い訳をしています。
再犯をしないためには、否認の心理を何としても弱めなければならないのですが、否認の心理を弱める第一歩が性犯罪というものへの理解を深めることです。
性犯罪加害者は、脳内に性嗜癖行為に及びやすくなる回路ができていることを認めなければなりません。
この点を認めることができるからこそ、回路を持った上で再犯をしないという対策を実行できるようになるのです。
性犯罪を繰り返さない人の特徴
カウンセリングで話を聴いていると、再犯をしない人は性犯罪を繰り返さないために具体的な行動を開始しているという特徴が良くわかります。
反対に日常生活に何の変化もない人は、再犯のリスクが高く、カウンセリングも自己判断で止めて再犯をしているという傾向があります。
元々、性犯罪はやってはいけないことだということを分かっているはずなのに、意思の力で欲求をコントロールできなかったために行ってしまう犯罪なので、逮捕をされた後には自分の意思の力だけで再犯を抑止できることが難しいということは容易に考えられることです。
しかし、性犯罪を繰り返してしまう人は、自分の日常生活の習慣を何も変えようとはしないので、人格的な成長は進むことなく欲求をコントロールする力も身につきません。
そして、カウンセリングを自己判断で中断して数カ月後、数年後に再犯をしていることが多いのです。
性犯罪を繰り返す人とは対照的に、もう二度と性犯罪はしないという思いを具体的な行動に移し、自分の人生を立て直していく人達はこれから説明するような特徴を持っています。
性犯罪についての知識を身に着ける
再犯をしない人達は、自分の意思の力を過信することなく、自分が抱えている性犯罪を行うという問題についてよく理解をしようと本を読み始めるなどして知識を身に着けようとしています。
知識は思考力を向上させてくれるし、再犯をしないための具体的な対策を実行することにもつながります。
初回のカウンセリングで改善の可能性が感じられる人は、カウンセリングを受ける前から本を読んだり、ネットで調べたりしてある程度の知識を持って相談に来られています。
性犯罪をしてしまう人は、自分自身のことがコントロールできていないわけですから、そのためにコントロールする手掛かりとなる知識が必要なのは当然です。
意思の力も知識のない状態では弱いままですが、知識を得ることで思考力が増し、意思の力も高まります。
性犯罪を止めることができずに逮捕された人は、まず止めるために性犯罪を理解することから始めて下さい。
知識を得て習慣を変化させる
性犯罪に関する知識を学び、深く理解することができた人は日常生活を具体的に変えようと試みます。
実際に再犯はしていない上に夫婦関係の信頼を回復して、仕事の取り組み方も良くなっている人達が始めた行動、変えた行動などを紹介します。
- 日記をつけるようになった
- 月に1回は夫婦で大切なことを話し合う時間を取るようになった
- お酒を飲むのを止めた
- 月に数冊の本を読むようになった
- ランニングや筋トレ、その他運動をするようになった
- 会社から早く帰る日を作った
- 自分の本音を言葉にする努力を始めた
これら他にもいろいろありますが、カウンセリングを開始してから、日が経つにつれ再犯のリスクが低下しているなと感じる人は、積極的に習慣を変えようとしているという共通点があります。
再犯防止のカウンセリングと生活習慣の維持
性犯罪を抑止し続けることができている人は、最初に通い始めたころに比べて頻度は落ちたとしてもカウンセリングを継続されています。
カウンセラーから見ても再犯の可能性は限りなく低くなったと感じられる人はカウンセリングの頻度を落としてもらうのですが、3カ月に1度、半年に1度など自分のペースでカウンセリングを利用することで良い生活習慣を維持しておられます。
その人達は、日常生活では、心理的に成長すること、適度な運動、ストレスケア、人間関係を安定させる努力などを継続することで、再犯のリスクをどんどん減らしているという感じがします。
性犯罪をしたことは心から反省しなければなりませんが、反省とは自分の行為の問題点を認めてその行為を行わないように意識するということだけは不十分です。
それは性犯罪の再犯が多いことが物語っています。
では反省と何かというと、性犯罪が再犯の可能性が高い犯罪だと認めた上で、再犯をしないための生活習慣を維持し続けるという行動だと思います。
再犯をしないという意志だけではなく、そこに確かな行動が伴っていることが重要なのです。
カウンセリングを受ける頻度を減らしていく中で、再犯の抑止につながる生活習慣が定着していくことが大切です。
カウンセラーは、性犯罪を止め続けるために再犯を抑止する生活習慣の維持をサポートしていきます。
性犯罪をしてしまってカウンセリングを受けることになった方は、再犯をしない人の生活習慣に近づいていくために取り組んで頂きたいと思います。