手洗いがやめられないという悩み
世の中には、手洗いがやめられないということで悩んでいる方がおられます。
これは潔癖症であり、強迫性障害(強迫症)という心の病のカテゴリーに入ります。
「自分は潔癖症だ」と他人に話している人がいたとして、潔癖の程度が生活に支障をきたさない程度なら問題ないのですが、潔癖なことによって行動が制限されるなどの問題が生じている場合は強迫性障害ではないかと考えられます。
手洗いをやめることができないという人は、生活に支障が出ていたとしても人に相談しないため、周囲に強迫性障害であることを知られていないケースが多いです。
自分が悩んでいることを人に相談しないのは、手洗いをやめることができないという状態を理解してもらえるのか不安という思いだけでなく、手洗いという行為が心の葛藤から逃れる手段になっていることで抵抗を感じるところがあります。
手洗いは心の葛藤から逃れるための強迫行為
手洗いがやめられないのは、手を洗うことによって本人がメリットを得ているからです。
そのメリットとは、心の中で生まれた葛藤を回避できるというもの。
実際に親子関係の問題やいじめ、将来への不安等、自分の中で上手く折り合いがつけられないことが発症のきっかけになるケースがよく見られます。
以下のような背景があることで葛藤を抱える力がなく、強迫行為によって誤魔化す形になっているのです。
・生真面目で完璧主義傾向がある性格で自分の気持ちに折り合いをつけるのが苦手
・親子関係でじっくり葛藤に身を置く時間をもらった経験(「やりたくない」とぐずったときに気持ちが収まるまで寄り添ってもらった等)がほとんどない
・他人に迎合して自分の意見を持たない、上手くいかないことはすべて他人のせいにする等によって葛藤を避け続けてきた
心の中で生じた不安感や不快感に囚われた時、本来は自分の思考によって気持ちを落ち着けたり、別のことに意識が向いた時に不安感や不快感を忘れます。
しかし、手洗いなどの強迫行為が止められない人は、強迫行為が心を落ち着けるための儀式になっているため、心が不安定になると強迫行為をせざるを得ない状態になってしまうのです。
強迫行為は隠すことで悪化する
強迫行為で悩んでいる人は、自分の行為が普通ではないと自覚しているからこそ、自分の悩みや苦しみを他人に理解してもらうことが難しく感じています。
また、自分の悩みを知られると【おかしい人】と思われたらどうしようという思いもあります。
これらの理由から、強迫行為をしてしまうことを誰にも相談できずにいるのですが、自分は周囲の人に理解してもらえないことで悩んでいるという認識や強迫行為を隠そうという思いが葛藤を生むため、強迫行為の悪化につながることがあるのです。
本来であれば自分の悩みを相談するという段階で葛藤を抱えて乗り越えていくはずが隠すという手段で逃れている。
隠したことによって葛藤が生まれ、またその葛藤から逃れる手段として強迫行為を繰り返す。
そもそも「バカバカしいのにやってしまう」強迫行為自体が葛藤そのものですよね。
強迫性障害は葛藤から逃れ続けることで維持、悪化していくものだと言えるのではないでしょうか。
カウンセリングは自分と向き合う時間であるため、カウンセラーのサポートを受けながら葛藤を乗り越えていくことができます。
強迫性障害の特徴
強迫性障害は、発症するのが20歳前後で男性は女性に比べて発症年齢が低いケースが多いです。
ただ、20歳までに発症しても周囲の人に悩みを打ち明ける、更に病院を受診したり、カウンセリングを受けるまでには時間を要するため、病院やカウンセリングルームに相談に行くのは30歳前後になると言われています。
実際に弊社に強迫性障害で相談に来られる方の多くは30歳前後です。
時折、学生の方から相談をいただくことはありますが、ご両親が手洗いをやめられない状態やその他の強迫行為に気付いた場合がほとんど。
子供が自ら親に強迫行為があることを話しているケースは稀です。
なぜ手洗いがやめられなくなるのか
手洗いがやめられないという強迫行為が始まる原因に関してハッキリとはわかっていません。
ただ、脳の神経回路、情報伝達に異常が生じていると考えられているところがあります。
人間の脳は、生まれてから大人になるまでに後頭葉から発達が進むのですが、前頭葉というおでこの奥に位置している場所は25歳でやっと他の部分に追いつくほど発達のスピードが遅いと言われています。
前頭葉は、感情のコントロールや思考力に関係している場所なので、強迫性障害が若い年齢で発症していることから脳の発達の順序が関係していると考えられます。
強迫性障害の人がカウンセリングを受けた方が良いのは、カウンセリングにより感情のコントロールや思考力を向上させていくことが強迫行為の改善につながっていくからです。
「手洗いがやめられない」から強迫性障害は悪化していく
手洗いがやめられない強迫行為は、誰にも知られず自己完結できる範囲であれば大丈夫だと判断しがちです。
ただ、強迫観念に駆られて手洗いを繰り返すことで悪化してしまい、ドアが閉まったかどうか気になって何度も閉め直す、鍵の閉め忘れが気になって何度も家に帰る、間違ったことを言ってしまったと思って何度も言い直す等、どんどん強迫行為が増えて大変な状態になっていきます。
今の状態なら何とか耐えられるからと我慢するのはやめましょう。
そして、大したことではないと自分の中で問題を過小評価しないようにしてください。
本来やらなくていいはずのことを頭でわかっていながらやるのはものすごく嫌なことです。
手洗いがやめられないことで生活に支障をきたしていない段階でも改善に向けた行動を起こしていただければと思っております。
強迫性障害のお悩みの方はカウンセリングへ
強迫性障害のような潜在的な葛藤を抱えている方は、自分の心の中の葛藤に気づき、それを受け入れることによって気持ちが楽になります。
強迫性障害になる方は、真面目で一生懸命な方が多いのですが、その影響もあり自分の心の葛藤を押さえつけてしまっていることもあるため、カウンセリングで話を聴いてもらうことによって自分の心の葛藤を和らげること、そして心の葛藤との向き合い方を身につけていくことが大切になります。
強迫性障害の克服方法
強迫性障害は心の葛藤に脳が過剰に反応している状態なので、その反応が収まるまで待ち、反応が収まるという体験をすることが大切です。
カウンセリングでは、強迫行為をしたくなる葛藤が生じた時、それをじっと感じながら葛藤に身を置くことや葛藤が生じた時に心を落ち着かせる方法をお伝えしています。
自分の中で形成された「葛藤−行動−葛藤の回避」というパターンが変わり、葛藤を打ち消す行動をしなくてもいい状態になることで改善に向かうのです。
カウンセラーから強迫性障害についての知識を学ぶことも改善のために有効です。
心に関する知識を学ぶこと、自分の心理状態、性格、行動などの関係性を自覚することは、心を安心させることにつながるので、強迫性障害のような悩みには効果的だと言えます。
カウンセリングでは、話を聴きながらどういうアプローチがその人の悩みの改善に適しているか見極めながら質問やアドバイスをするのですが、相談に来て頂ければ担当のカウンセラーがしっかりと話をお聴きして、その内容をもとに改善のご提案をさせていただきます。
強迫行為に悩まされない生活になる
手を洗う、鍵を確認する等の強迫行為が日常的になると、強迫行為ありきの生活をするようになります。
その結果、生活に支障をきたさずに済むことはあるのですが、本来強迫行為がなければもっと楽に生活できるはずですよね。
強迫性障害を発症する前の生活はどんな感じだったでしょうか?
過去を振り返ってみると強迫行為がない生活のイメージはしやすいと思います。
強迫性障害が改善しても性格が180度変わるわけではないため、強迫観念のようなものが浮かんでくることはあります。
ただ、その回数は今までとは比べ物にならないほど少なく、浮かんできたとしても強迫行為をせざるを得ない状態にはなりません。
手洗いがやめられないことでお悩みでしたら一度カウンセリングをご検討ください。