全能感がカウンセリングに与える影響
カウンセラーは、カウンセリングの道具である自分自身を知るための教育分析を受けることが大切です。
カウンセラー自身が自分の心の特徴を把握せずにカウンセリングをするということはとても危険だからです。
カウンセラーにとって教育分析がどれほど大切かということを、全能感という視点から説明していきます。
全能感とは
人間は、全能感という感覚を持っています。
全能感は、『自分は何でもできる』という自分を過大評価した感覚で、幼い子供ほど強い傾向があります。
しかし、成長過程で現実と向き合っていく中で、過大評価が現実的な評価へと変化していくことが健全で、大人になった段階では自分の能力や経験をもとに何がどの程度できるかを把握して、適度な自信に変わっていきます。
ただ、幼少期にアダルトチルドレンに該当するような家庭で育つなど、適切な養育を受けることなく大人になっていくと、未熟な全能感、歪んだ全能感を持つ人に育ってしまいます。
カウンセラーになりたいと思っている人、実際に資格を取得した人の中にも全能感の成長に課題を残している人がいるため、カウンセラーになる前に見つめ直して見つめ直しておくことが必要です。
心理学、カウンセリングの勉強と全能感
全能感が健全に育っていない人が、心理学やカウンセリングの勉強をすることは有意義なことです。
それは、知識を得ることによって、自己理解が深まったり、心が癒されたり、心のコントロール方法を学ぶことができ、社会生活を送りやすくなることも
あるからです。
しかし、心理学やカウンセリングの勉強をすることによって、自分でも人の役に立てそうだ、カウンセリングは人を変えることができるという感覚を持ち、十分な自己成長ができていないにも関わらずカウンセラーになろうとする人が出てくるのです。
心理学やカウンセリングを学んだことによって、自分は他人に影響を与える力を得たというような感覚になってカウンセラーをすることは非常に危険です。
しかし、全能感が未熟な人は誰かの役に立って全能感を未熟さを補おうとするので、心理学やカウンセリングの勉強を少し行っただけでカウンセリングを
しようとする傾向があります。
カウンセリングは自分の全能感を満たす機会ではない
成長していない全能感を持ったままカウンセラーをしてしまうと、不安定な全能感を補うためにカウンセリングをしてしまいます。
カウンセリングは、本当にクライエントの悩みや問題の解決という結果を出すためには、長期的に行っていく必要があります。
しかし、カウンセリングを行うと、クライエントは話を聴いてもらえたということでお礼を言ってもらえることもあります。
カウンセラーの自己満足としての結果なら短期的に得ることができるのです。
そのため、カウンセリングは自分の自尊心を満たしやすく、本当の効果とその効果を出した自分の能力は長期的に見ないとわからないのに、お礼を言われたことで自分にカウンセリングの力があると思い込んでしまうということが起きます。
弊社では、カウンセラーにクライエントからのお礼や言葉で自分のカウンセリングの成果を評価しないこと。
自分が行ったカウンセリングの評価は、クライエントの実生活の中に表れるので、成果を確認できないこともある、ということを心に留めておくように伝えています。
まずはカウンセリングを受けるべき
潜在的には、自分の全能感が適切に成長していないことを分かっているにも関わらず、カウンセリングをすれば容易に満たされていない思いを補えるような気がして、安易にカウンセラーを目指してしまう人がいるのです。
そのような状態でカウンセリングをしてしまうと、短期的な効果を得るために強引なアドバイスをしたり、クライエントに負担になる【宿題】を与えて、クライエントにしなくても良い努力や苦労をさせてしまうことになることもあります。
また、自分の言っていることを受け入れないからと言ってイライラしたり、クライエントに不必要なきつい言葉を投げかけてしまう恐れもあります。
本当ならカウンセリングをすることで自分の全能感を満たそうとしてしまう人は、カウンセリングを受ける必要がある人です。
カウンセラーを目指すのであれば、まずは自分自身と向き合って全能感の問題を克服することが必要です。
社会に貢献できるカウンセラーになるには
プロのカウンセラーとしてカウンセリングを行うということは、社会に貢献する活動を行っていくということでもあります。
しかし、自分の心を満たすためにカウンセリングを行っていることに気づけないままカウンセラーをしている人もいます。
教育分析でプロのカウンセラーに近づく
もし、現在カウンセラーとして活動しているけど、自分の心の課題が未解決だと感じる人がいたら、まずは教育分析を受けることをお勧めします。
教育分析は、自分の性格、心の癖、それが形成された理由などを経験の豊かなカウンセラーのカウンセリングを受けて明らかにしていくことです。
これは決して楽なことではありません。
実際のカウンセリングは、クライエントが自分の悩みや問題と向き合い乗り越えていくという精神力が必要な取り組みです。
カウンセラー自身が、自分の過去や性格と向き合うことの大変さを理解出来ていない場合は、カウンセラーの自己満足なカウンセリングをしてしまいます。
そんなことがないように、カウンセラー自身が教育分析によって自分の心理的な課題を乗り越えておくこと、そして自己理解を深めておくことが大切なのです。
カウンセラーとしての専門性を高める努力を続ける
成熟した全能感を養うために、目的を持ってカウンセラーとしての専門性を高める努力を続けることです。
クライエントは、自分の悩みや問題を解決するという目的を持ってカウンセリングを受けます。
その目的が達成できるように、カウンセラーは話を聴いて目的へのルートを見つけ、一緒に歩んでいかなければなりません。
カウンセラー自身が、専門性を高める努力をしつつ、カウンセリングを行うという努力と経験の繰り返しによって、自分は何ができるカウンセラーなのか把握していくことが必要です。
成熟した全能感とは、努力と経験という裏付けによって自信を高められた自信であり、自分ができることだけでなく、できないことも把握している感覚です。
カウンセラーとして、人の人生に関わるなら教育分析を受けて自己理解を深めること、専門家として自分ができることを増やしつつ、できないことを把握する努力を続けることが求められるのです。