アイデンティティーが揺らぐとどうなるのか
カウンセリングをしていて、人の持つアイデンティティーと心の病には深い関係があると感じるようになりました。
アイデンティティーとは、『環境や時間が変わっても、自己と同一している要素』のことを言います。
一番わかりやすいのは、自分や誰の子供かということです。
生活環境が変わったり、時間が経過しても変わることのない自分は誰かということを表すことができる要素です。
世の中で自分という人間のアイデンティティーを意識して生きている人は少ないと思います。
それは、特に意識しなくても、人には家族、職場、地域の中での役割があり、役割を演じていることで改めて自分のアイデンティティーを強く意識しなくてもすむからです。
アイデンティティーの喪失により生じる問題
私たちは、無意識に役割を演じながら日々を送れている時は、自分の人生に疑問を持つこともないのですが、何かのきっかけで自分の役割に疑問を持ち始めると、漠然とした悩みや不安を抱えるようになります。
これは、社会の中での自己の存在感の揺らぎでもあり、揺らぎが生じた時点で悩みや不安を頂いていることを自覚することは難しいため、別の形で悩みや不安が表面化してくることが多いと言えます。
例えば、下記のような例を挙げることができます。
- 仕事や家事への関心ややる気が無くなる
- 漠然とした不安感が強まっていく
- 自分の人生に疑問を感じ始める
- 仕事に依存して、健康や家庭を省みず働くようになる
- 物事への執着が強くなり、盲目的になる
- 子育てが辛く感じるようになる
- 子どもにイライラをぶつけてしまう。
- 恋愛で相手に依存しはじめ、それ以外のことがどうでもよくなる。
アイデンティティーの喪失とは、自分の役割を見失うことで、自分の存在意義に疑問が生まれ、心が不安定になることです。
その結果、上記のような問題が生じることもあるのです。
アイデンティティーと依存
世の中には、アイデンティティーを特定の人との関係だけに偏らせることで支えている人もいます。
特定の人との関係でアイデンティティーを保っている場合、その相手がどんな人かによって自分の心の状態も大きく左右されます。
自分のアイデンティティーが、現在の人間関係で発生している役割のみに依存していると、そこに対する疑問が感じられずその役割に没頭してしまう反面、心は疲弊していたり、依存対象の言動により心が不安定になりやすくなります。
例えば、
恋愛で相手がいないと生きていけないと思うこと、親から自立したいが距離をとることが不安に思うこと、友人が自分以外の人と仲良くすると不安になる、という感覚を持っている人は、常に人の言動や思いに振り回されることになります。
人は、人間関係によって心が支えられているという部分はあるので、誰もが多少なりとも他人との関係性を自分のアイデンティティーを支えとしていますが、自分のアイデンティティーの支えを特定の人に依存しているのではなく、複数の人との関係性でアイデンティティーを支えている人の方が心は安定しやすいと言えます。
アイデンティティーを安定させるためには
人間関係だけでなく、自分がこれまで行ってきたことがアイデンティティーの要素となっている人は、人間関係の変化でアイデンティティーが揺らぎません。
例えば、勉強、スポーツ、芸術など、自分が習得したものへの自信がある場合です。
アイデンティティーとは、自己という存在への信頼感のようなものなので、可能な限り支えとなるものが分散されていること望ましいと言えます。
複数の人間関係、自分が取り組んできたいくつかの事柄が支えになっていることが理想です。
人間は、自分の価値を支えているものが1つのものに偏っていると執着も強くなり、その支えが無くなると一気に心が不安定になって、抑うつ状態や不安、依存に陥ることもあります。
そうならないように所属するコミュニティを複数作ったり、仕事だけでなく趣味にも時間を割いたりすることも大切です。
また、現在自分の心理状態が不安定で、それはアイデンティティーが揺らいでいるのかもしれないと感じる方はカウンセリングを受けてみて下さい。
下記は、自信をつけるとはどういうことかについて書いた記事です。
参考にしてください。