
「ご飯よりも睡眠よりもゲームが優先になっている気がする…」
「小さいころにもっと厳しくしておけばよかったのかな」
夜遅くまでゲームやスマホにかじりつく子どもを見てイライラする親は多いです。
また、「このままでは就職できないかも…」「人と関わることもなくなって生涯孤独になるのでは?」などの不安に駆られることも少なくありません。
そして、その焦りから「いい加減にしなさい!」「ゲームを取り上げるよ」と強い言葉を投げかけてしまう。
しかし、ここで一度立ち止まって考えてみてください。
子どもはなぜ、食事も睡眠時間も削ってまでゲームの世界に没頭しなければならないのでしょうか。
研究やカウンセリングの現場で明らかになっているのは、ゲーム依存の多くが「現実世界(特に家庭)における苦痛のセルフケア」として機能しているという事実です。
子どもにとって、ゲームはただの遊びではなく、現実のストレスから自分を守るための避難所になっています。
避難所を取り上げることで苦痛が和らげられる…とは考えにくいですよね。
ゲーム依存を治すということは、ゲームを禁止するのではなく、ゲームに依存しなくても良い環境を作ることなのです。
この記事では、ゲーム依存に陥る子どもの心理やその改善に向けたアプローチをお伝えします。
ゲーム依存症とは?
ゲーム依存症は、ゲームを優先することで睡眠や食事、学校生活等に支障をきたしており、自分ではコントロールできない状態になってしまう病気です。
正式な医学病名は「ゲーム障害」で2019年世界保健機関(WHO)によって「国際疾病分類(ICD-11)」に正式な疾患として採用され、アルコールやギャンブルと同様の依存症(精神疾患)として認定されました。
子どもがゲーム依存症かどうかをチェックする6項目
どこまでなら趣味の範囲で、どこからがゲーム依存なのかはわかりづらいと思います。
下記項目で当てはまる部分はいくつあるでしょうか?
- 「あと10分」と言っていても、結局数十分ゲームを続けてしまう。
- 食事を早く済ませてゲームの時間をより多く作ろうとする
- 今まで好きだったことや遊びなどの趣味が全てゲームに統一されている
- ゲームのことで嘘や隠し事をするようになった(「ゲームしてないよ」「宿題はもう終わったよ」等)
- ゲームが出来ない状況だとイライラしたり、虚無感を感じる
- 体の不調を無視する(目や腰の痛み、眠気を薬やエナジードリンクで誤魔化す等)
これらの項目にたった1つでも当てはまればゲーム依存の傾向があると言えます。
複数個当てはまっているなら注意と対策が必要です。
ゲーム依存を生み出す親が気づかない「家庭内の窒息感」
子どもをゲームの世界へ押し出す要因として特に影響力が強いのが家族の関わり方です。
中でも、以下の3つは親が良かれと思ってやっていることが多く、非常に根が深い問題となっています。
きょうだい間の比較による評価
「お兄ちゃんはあんなに勉強しているのに」
「妹は素直なのに」
こうした比較は、子どもの自尊心を傷つけるだけでなく、きょうだいで足の引っ張り合いをさせることにも繋がってしまいます。
自分より劣る誰かがいることで他のきょうだいは親からの賞賛が得られると思い安心できます。
そうしてきょうだいの誰かがその役割を担わされてしまうのです。
条件付きの愛情というプレッシャー
「テストで80点以上取ったら認めてあげる」
「良い子にしていたら遊びに連れて行ってあげる」
こうしたメッセージを無意識に発していないでしょうか?
子どもは80点以下の自分や間違いをしてしまった自分では親に愛されないという感覚ができあがっていきます。
役割を奪ってしまう
良かれと思って、親がなんでも先回りして身の回りのことをしてしまうことはありませんか?
明日の学校の準備などの物理的な仕事を親が代わりにすることで本人の仕事を奪ってしまうこともあります。
また、物理的なものだけではなく、どんな習い事をしたいかどんなことが得意と感じるかなどの気持ち的な部分の決定権も奪ってしまっている可能性も考えられます。
親が普段から子どもの様子を見ていれば、何が向いてそうだとかこっちの方が得意そうだと察することは難しくありません。
しかし、子どもにとって大切なのは正解ではなく「自分はこれが苦手かもしれない」「こっちの方がうまく行く気がする」と考え、自分で決定していく過程です。
この過程を経験できていない子どもは、ゲームの世界で”頼れるリーダー”や”回復メインのサポーター”や”近距離攻撃担当”などの役割を手に入れようとする。
ゲーム内だけが私生活や勉強とは違って親の干渉がなく、「この敵にはこの武器で挑もう」「スコアを多く出すためにこのアイテムを集めよう」など自由に決定できる場になっていきます。
子どものゲーム依存は家族だけでの解決が難しい
多くの親御さんは、自力でなんとかしようと奮闘します。
「こんなことで他人に相談するなんて馬鹿げている」「近所の人に知られたくない」と家族に問題があることを恥と捉えて隠そうとする家庭が多くあります。
そのお気持ちは大変わかりますが、子はそんな親の気持ちを敏感に察知します。
「うちの親は世間体が大事なんだ」「周囲からの評価のために子どもに熱心に教育している」と感じ、反発心を抱きやすくなります。
その結果、多くの場合“親 vs 子ども“という対立関係を加速させてしまうのです。
親が怒れば怒るほど、世間体のために機嫌を取ろうとすればするほど、子どもは「親は自分の敵だ」「自分を理解してくれない」と心を閉ざし、さらに心の安定を求めてゲームにのめり込みます。
「ゲーム依存は子どものうちだけだろう…」と考える人もいますがそんなことはありません。
むしろ子どものうちはそんなに目立たなかったゲーム依存の傾向が、大学進学や就職を機に親元を離れて加速するケースも多くあります。
この悪循環を断ち切るために必要なのが専門家によるカウンセリングです。
ゲーム依存症に対してカウンセリングでは具体的に何をするのか
「カウンセリングに行っても、ゲームを辞めさせてくれるわけじゃないんでしょ?」と思われるかもしれません。
その通りです。
カウンセリングの目的は、単にゲームを辞めさせることではなく、「ゲームに依存しなくても安心出来る心」を再建することにあります。
具体的には、以下のようなプロセスを進めていきます。
安全な場所の提供(子どもへのアプローチ)
カウンセラーは、親のように正論で子どもに接することはありません。
「なぜそのゲームが好きなのか」「ゲームの中でどんな自分になれるのか」を肯定してお聴きします。
誰にも否定されずに自分の世界を認められる経験を通して、子どもは「現実の人間関係でも自分を出していいんだ」という安心感を少しずつ取り戻していくのです。
家族のコミュニケーション・パターンの修正(親へのアプローチ)
ゲーム依存のカウンセリングにおいて実は親のカウンセリングが最も重要です。
子どもに対する言葉がけの変換
「あなたはゲームばっかり」というユー・メッセージ(You message)ではなく、「朝元気に起きてくると嬉しい」というアイ・メッセージ(I message)への変換。
子どもの立場になって受け取りやすい言葉がけをしていけるようになることが大切です。
無意識の支配への気づきと放棄
親の立場からすれば、子どもにはこう育ってほしいという気持ちが少なからずあるでしょう。
子どもを自分の理想通りに動かそうとする無意識の支配に気づき、なぜそう思うのかについて深堀します。
案外、子どものためではなく自分のためだったり、子どもの心配ではなく自分の心配であったりすることは多いものです。
親自身の学生時代もしくは現在抱えている劣等感を拭うため、子どもの進路に熱心になるケースはよくあります。
子どもと親は当然ながら別の人間であり別の人生を歩んでいく。
子どもを一人の人間として尊重する距離感を掴み、子どもに支配的なかかわりをしなくていい心理状態を目指します。
役割の再構築
子どもが家庭内で確固たる自分の存在を感じられるよう、小さな役割や関わり方を一緒に考えます。
コミュニケーションを取ろうと「水飲む?」「お菓子食べる?」など尋ねるやり取りをしてしまいがちですが、間接的に子どもが決定する要因にまで足を踏み込んでしまうことになります。
子どもを1人の人間として尊重すること、自由意思を見守ることが必要です。
根本原因(トラウマや特性)の探究
いじめ、学習障害、ADHD(注意欠如・多動症)などの背景が隠れている場合、それに対する適切な支援が必要です。
ゲーム依存は二次障害であることが多いため、その根っこにある特性の理解や子ども本人が抱える生きづらさを解消していきます。
最後に:今からできる第一歩
子育てに関してカウンセリングを受けることは、決して親として間違っていたということではありません。
いつも子どものことを思って接して来られたと思います。
それは”間違い”ではなく”掛け違い”です。
ボタンの掛け違いのように子どもとの間でズレが生じることは避けられないところがあります。
カウンセリングはその掛け違いに気づき、新しい関係を築こうとする第一歩です。
カウンセリングは守秘義務によって守られていますので、ご相談いただいた内容が周囲に漏れてしまうことはありません。
まずは一度、安全な場でお話しいただければと思っております。











