依存症、うつ病、不安障害、パーソナリティ障害、DVやハラスメント、コミュニケーションの問題…
その背景に愛着障害があったというケースは多いです。
まず愛着障害とは何かを知り、自覚し、そして克服していくためにカウンセリングでサポートしております。
愛着障害とは
愛着障害とは、幼少期の親や養育者との関係において形成される愛着(アタッチメント)が適切に発達しないことから生じる心理的な問題です。
赤ちゃんの頃にお腹が空いたり、オムツが汚れたりして泣いたら養育者が駆け寄ってきてくれる。
普段のお世話やスキンシップ、言葉がけによる愛情表現を繰り返してもらう中で愛着は形成されていきます。
愛着は子どもが安心感を持ち、他者との信頼関係を築くための土台となるもの。
しかし、養育者との関係に問題があった場合、愛着が上手く形成されないことで心の安全基地がない状態となり、感情のコントロールや自己表現に支障をきたすようになってしまうのです。
愛着障害は5歳までに発症し、下記の2つに分類されます。
反応性愛着障害(反応性アタッチメント障害)
反応性愛着障害の子は人に対する警戒心が非常に強く、甘える、頼るといったことが上手くできません。
他人に関心を示さず無表情で一人の時間を好む傾向が見られます。
ポジティブな感情よりネガティブな感情が態度や行動に出やすい。
親や養育者の無関心やネグレクト傾向が原因になると言われています。
脱抑制型愛着障害(脱抑制性対人交流障害)
脱抑制型愛着障害の子は人に対して馴れ馴れしく、誰彼問わず甘えることができます。
感情のコントロールが苦手で依存的になりやすい。
子供同士での関係を築くのが難しいので、年齢が近い兄弟姉妹間、幼稚園や保育園の友達との関係でトラブルを起こしやすい傾向が見られます。
自分に関心を向けてもらうために問題のある行動を取ってしまうことが少なくありません。
幼児期に発症した愛着障害に気付けないまま大人になってしまい、心理的課題や人間関係の問題を抱えている場合は「大人の愛着障害」と呼ばれています。
愛着スタイル
比較的軽度な愛着障害と言われているのが愛着スタイルです。
愛着スタイルは、個人が他者との関係をどのように築くかを示すもので安定型と不安定型の2つに分類されます。
不安定型はさらに不安型、回避型、混乱型の3つに分かれ、それぞれ下記のような特徴があると言われています。
安定型
安全な基盤を持ち、他者との関係を築く際に信頼感と安心感を感じるタイプ。
愛されることを確信していて助けを求めれば助けてもらえると当然のように思っています。
基本的にポジティブで相手の反応をネガティブに捉えることがありません。
相手に配慮しながら自己主張ができるので、適切な距離感で人との関係を形成していきます。
不安型
他者との関係に対して過度に依存したり、不安を抱えたりするタイプ。
相手からの反応に敏感で、常に見捨てられないかどうかと恐れています。
ネガティブに捉えがちで間違った解釈をしやすく、その結果不安定な気持ちになりやすい。
自己肯定感が低いため、相手の期待に応えて何とか自分の価値を保とうとする傾向が見られます。
回避型のパートナーに愛情を求め、逃げられることで執着して関係を悪化させていくことが多いです。
回避型
他者との親密さを避け、自立心が強いタイプ。
人に相談せず抱え込み、何でも一人で解決していこうとします。
縛られる、向き合わされる等といったことがあるとより回避が強まる。
束縛が強い不安型のパートナーとのかかわりで関係をどんどん悪化していくケースが多いです。
感情表現が乏しく、他者との距離を取ろうとする傾向があります。
混乱型
不安と回避が入り混じった複雑なスタイルで、相手への信頼感が欠如していることが多い。
不安から親密な関係を求めるもストレスになって離れようとする。
傷付くことへの恐れが非常に強く、極端な発想に至りやすいのが特徴です。
親や養育者との関係で深く傷ついた経験が影響していると言われています。
愛着スタイルの診断チェックリスト
愛着スタイルは、私たちが他者との関係を築く際の基本的なパターンを示しています。
自分自身の愛着スタイルを理解することは、対人関係や自己成長において非常に重要です。
簡易的な診断チェックリストを用意しましたので、一度自分の愛着スタイルについて考えていただければと思います。
チェックリスト
以下の質問に対して該当する場合は☑を入れてください。
あなたが選択したのは0個です。
結果の分析
☑が7個以上の場合:
あなたは「不安型」または「回避型」の愛着スタイルである可能性があります。
他者との関係において不安や距離感を感じやすく、信頼構築に課題があるかもしれません。
☑が3個以下の場合:
あなたは「安定型」の愛着スタイルである可能性があります。
他者との関係を築く際に安心感があり、健康的なコミュニケーションができる傾向があります。
☑が4~6個の場合:
あなたは「混乱型」の愛着スタイルかもしれません。
この場合、状況によって異なる反応を示すことがあります。
このチェックリストはあくまで自己分析の一助として活用していただければと思います。
愛着スタイルについてさらに深く理解したい場合や克服したい課題がある場合は、専門家によるカウンセリングをご検討ください。
自己理解を深めることで、より良い人間関係や自己成長につながります。
大人の愛着障害を克服する方法
愛着障害は幼少期の親や養育者との関係が原因となっているため、大人になってからは克服できないと思いやすいところがあります。
しかし、以下のような取り組みを継続すれば成人後でも愛着障害を克服していくことはできるのです。
自己理解
自身の愛着スタイルや過去の経験について理解し、自覚することが重要です。
人とのかかわりにおける考えや行動のパターンを知っていれば、都度別の方法を選択しやすくなります。
回避型愛着スタイルの人は「逃げようとしているな」と気付くことでとどまりやすくなる。
不安型愛着スタイルの人は「不安に飲まれているな」と気付くことで一旦落ち着くことができる。
安定型愛着スタイルのパターンに少しずつ変えていくことによって不安定型の度合いは下がっていきます。
安全基地の形成
心の安全基地は本来であれば親や養育者との愛着によって培われていくものでしたが、大人になった今当時に戻ってやり直すことはできません。
もう形成できないのではと思うかもしれませんが、現在の生活でかかわりのある人たちとの関係で形成することができるのです。
ただ、パートナーや親しい友人を親に見立ててかかわってしまうと共依存状態にしかならず、安全基地はいつまで経っても形成されません。
逆に相手との関係がぎくしゃくする、何かしらの問題が起こるといった形で不安を強める結果になってしまいます。
大人になってからの安全基地形成は、相手に愛情を与えてもらうだけでなく、自分から愛情を与えて相互に成長していくことが必要です。
お互いを尊重し合うアサーティブなコミュニケーションがベースとなるため、コミュニケーション方法を学ぶことから取り組んでいきます。
心理的な成長
愛着障害を抱えている人は、幼少期にとらわれた状態になっていることで心理的な成長が止まっている部分があります。
どこか自分の問題から目を背けて日々を乗り切っているところがあるのです。
心理的な成長を促していくためにまず自分と向き合えるようになることから。
愛着障害はトラウマとの関連性が深いので一人で向き合うことはなかなかできません。
無理に向き合おうとすればバランスが崩れてものすごく不安定な状態になる危険性があります。
専門家であるカウンセラーのサポートを受けながら自分のペースで少しずつ向き合うことを重ねていくことが必要です。
愛着障害克服におけるカウンセリングの意義
カウンセリングは、愛着障害克服において非常に重要な役割を果たします。
専門家と話すことで、自分自身について深く掘り下げ、新たな視点から問題を見る機会が得られます。
また、安全な環境で感情や体験を共有することで、信頼関係を築きながら自己理解が深まります。
カウンセリングは、個々のニーズに合わせた具体的な支援やアプローチも提供し、効果的な克服方法へと導いてくれます。
このように、愛着障害への理解とその克服には、自己認識と専門的サポートが不可欠です。
自分自身と向き合いながら、新たな人間関係や生活への希望を見出す旅路となります。