「えっ、俺がモラハラ!?」

「傷つけるようなことを言った覚えがない…」

「一体自分は何を間違えたのか」

驚きと混乱の中で涙が止まらない日があったかもしれません。

「妻に申し訳ない」「やり直せるなら自分を変えたい」という気持ちになっておられることでしょう。

しかし、もしあなたが「妻のために自分なりに我慢してきたのに」「傷つけないように言いたいことも飲み込んできたし一体何がダメだったんだろう」と思っているなら、一度立ち止まり、その気持ちの裏に隠された“あるメカニズム”に目を向ける必要があります。

妻が去った本当の理由―あなたの「優しさ」と「恐怖」

「不満を言ったら妻を傷つけると思って黙っていた」

「迷惑をかけたくないから一人で抱え込んでいた」

これらはモラハラを理由に離婚を告げられた夫たちがしばしば口にする言葉です。

あなたにとっては「妻を想っての行動」だったかもしれません。

しかし、受け取っていた妻側の世界では、全く異なる景色が見えていた可能性があるのです。

「黙ること」は配慮ではなく「拒絶」

あなたとしては自分で気持ちを静めようと頑張ったことが、妻からすればただ機嫌の悪い人に見えていたのかもしれません。

何に怒っているのか分からない冷たい空気感は、言葉の暴力以上に相手を困惑させ不安な気持ちにさせてしまいますからね。

「我慢」は寛容な対応ではなく「威圧」

口論になればお互いイライラしてしまいますし、相手を傷つけることにもなってしまいます。

思うことがあってもそれを言わずに飲み込むことが何度もあったでしょう。

しかし、心のモヤモヤは消えていないため、その苛立ちが小さな行動に表れてしまうことがあります。

「ドアを強く閉める」「ため息(もしくは舌打ち)が出る」など、妻に対してやっていなかったことが間接的に妻に恐怖を与えていたのかもしれません。

このように、あなたとしては妻を傷つけないように我慢してきたことの多くが、妻にとっては「支配」と「恐怖」もしくは「押し付け」だったというすれ違いになっていた可能性があるのです。

すれ違いが起きる 4つの無意識的な心理

なぜ、あなたの想いが妻を傷つけてしまうようなことになっていたのでしょうか。

そこには、無意識の4つの心理が働いています。

① 妻を想うという『自己完結』

「妻のために」という言葉の多くは、妻本人の要望ではなくあなたの想像からきていたのかもしれません。

「前にこうしてほしいと妻から言われたことがある」や「前はこれで怒られたことがある」という経験からの想像もあったと思います。

しかし、前の状況と今の状況が同じであるとは限りませんよね。

実際の妻は「ちゃんと話し合いたかった」「勝手に我慢して不機嫌な態度を取るくらいなら不満を言ってほしい」と思っていたのかもしれません。

相手の立場になって考えず自分がよかれと思ってする配慮は自己満足に終わってしまうことがあるのです。

② 不機嫌によるコントロール

自分の怒りや悲しみを適切な言葉で伝えるコミュニケーションを避け、溜め込んだストレスが「ドアを強く閉める」「素っ気なくする」といった行動に出ていませんでしたか?

これは共同生活を送る相手にとって「攻撃」と捉えられていたのかもしれません。

「俺は妻に怒鳴ったことなんてない」「傷つけるようなことも言っていない」と思っていても、そのような不機嫌と分かるような態度から、妻は気を遣わざるを得なかった可能性が高いのです。

最近は不機嫌さをあらわにして周りに気を遣わせるのは「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」と言われていますよね。

本来なら安心出来る家の中に「これ以上怒らせてはいけない雰囲気の人」がいる状況は、妻からすれば逃げ出したくなるくらい息が詰まる思いだった可能性があるわけです。

③ 『自分は被害者である』という逃避

「愚痴は言わずにすべて一人で抱え込んで」

「妻のために耐えてきたが、それが間違いだったようだ」

今までの生活を振り返ったとき、後悔や反省が浮かぶことはよくあると思います。

その気持ちの裏には、「妻のためにしたことが裏目に出た」「自分の思いが妻には届かなかった」という美しく悲しいストーリーに酔ってしまう心理が潜んでいるかもしれません。

この悲しいストーリーによって反省しているうちはどんな言葉で伝えようが、残念ながら妻の心が動くことはないのです。

④ 「愛」と「支配」の混同

「悪気はなかった」

「愛しているからこそ想ってしたこと」

そう言いたくなる気持ちはわかります。

でも、大切なのはあなたの意図や悪気の有無ではなく、「相手が受け取った結果(恐怖と圧迫感)」です。

愛情のつもりだったものが結果的に相手を苦しめることになっていた可能性が考えられます。

また、「妻はとても繊細だからもっと気を遣うべきだった…」と反省の弁を述べられる方もいますが、そこには「妻が繊細だから何気ないことを大げさに捉えていたのだろう」という批判的な考えが含まれている場合があります。

この認識でいる限りはどんな反省の言葉も妻の心に響くことはありません。

反省の言葉を考える前に、今後の言動を見直す前に、まず今の自分の捉え方や認識を見直すことに意識を向けてみましょう。

手紙の内容や涙ぐましい姿は妻の目にどう映るのだろうか

妻に出て行かれた後、多くの男性が手紙(ライン)を送ったり、涙を流して「変わる」と誓ったりします。

しかし、その内容を今一度冷静に思い返してみてください。

「俺なりに家族のために必死で頑張ってきたつもりだったんだけど力不足でごめん」

「言いたいことも飲み込んで我慢していたことが、全部空回りだったと気づいた」

「君を幸せにできないダメな夫でごめんなさい」

「これ以上苦しめたくないから、身を引くのが俺にできる最後の優しさだと思っています」

「今まで家族のために尽くしてくれてありがとう。俺のことは忘れて幸せになってね」

ご自身の中では一心に反省を伝えようとしてのことだと思いますが、これを受け取った妻の心に湧き上がるのは感動ではなく、不快感や嫌悪感である場合がほとんど。

なぜなら、この文章には「読んだ相手がどう思うか」よりも「自分がいかにつらいか」が入っているからです。

「俺は今こんなにも精神的に追い詰められている」

「俺なりの頑張りが伝わっていなくて悲しい」

「ただのすれ違いなのにこんなにも事が大きくなってしまった」

無意識に思っていることが文章の中に漏れ出しています。

反省を伝えたいはずなのに「自分は悪くなかった」「仕方がなかった」「お前にも悪いところがあったんじゃないか」というメッセージが込められた内容になっているのです。

今の自分がいかにつらいかを伝えることよりも「自分が相手にどれだけの恐怖を与えたか」という痛みに思いを馳せることが必要ではないかと思っています。

「反省している自分」「傷ついている自分」を口にしてしまう間は、あなたが見ているのは「自分自身」でしかなく妻の心ではないのかもしれません。

「自分を見つめ直す」とはどういうことか

少し厳しい内容も書いてきましたので、ここまで読んで息が苦しくなられているかもしれません。

「じゃあ、俺はどうすればいいんだ」「何をしても責められるじゃないか」と絶望的な気持ちになってしまう人もいるでしょう。

しかし、ここがあなたの人生の本当の分岐点だと言えます。

今までは「妻に戻ってきてほしい」「悪気がなかったことを分かってほしい」という一心だったかもしれませんが、これからは「妻とやり直すため」だけでなく「自分自身の人間的な成長と変容のため」に自分の問題点と向き合うようにしてください。

本当の意味で「自分を見つめ直す」には以下の3つのステップが重要です。

ステップ1:「自分は加害者であった」という事実を受け入れる

「悪気はなかった」「自分なりの思いやりだった」という自分視点のみの考えは捨てましょう。

「自分の言動は結果として大切な人を恐怖に陥れ、精神的に追い詰める暴力(モラハラ)だった」という現実を、ごまかさずに直視するところから始めないといけません。

自分に問題があったと認めることにより問題意識が芽生え、自分を変えていかないといけないという気持ちが出てきます。

少し考えて思いつく範囲ではなく、習慣化されていて見えなくなっている部分まで見ていく必要があるため、カウンセラーのサポートを受けることをご検討ください。

ステップ2:相手の「恐怖と不安」を客観的に学ぶ

無意識だった不機嫌な態度や大きな音が、妻の心にどれほどの負担を与えたのかを考えてみましょう。

自分中心の感情(寂しい、悲しい)を横に置き、「受け手側の体験」を客観的に学び直すことが必要です。

自分に置き換えたらどんなことが当てはまりそうかを考えて想像力を働かせていきましょう。

今までなかった視点で想像することになるため、インターネットやSNSでモラハラ被害に遭っている妻が発信している声を聞くことは参考になると思います。

ステップ3:「許されること」を目的にしない

「反省すれば戻ってきてくれるはず」「変わった姿を見せることができればやり直せる」という自分にとってメリットのある見返りを期待しているうちは本当の意味で変わることはできません。

「傷つけてしまった妻にただただ謝罪したい」「たとえ離婚することになったとしても二度と誰かを恐怖で支配しない人間に変わる」という意識を持つことが真のスタートです。

自分がやってきたことがどれだけ妻を苦しめていたかに気付けば気付くほど謝って許されることではないと思えてきます。

自分に都合よく問題を矮小化しないように気を付けてください。

カウンセリングで取り組むこと

長年かけて築かれた認知の歪み(考え方の癖)は自分ひとりの反省や本を読むなどで治せるものではありません。

なぜなら、自分ひとりで考えているだけではどうしても「可哀想な自分」「頑張った自分」という思考に戻ってしまうからです。

だからこそ、モラハラや男性加害者の認知の歪みの修正に特化した「専門のカウンセリング」や「加害者更生プログラム」を強くお勧めします。

カウンセリングはあなたを一方的に責め立てるようなことはありません。

以下のようなステップを通じて、安全な環境であなた自身の思考パターンを解き明かしていきます。

自分の「怒り」の裏にある本当の感情を知る

あなたがドアを強く閉じた時、本当は「寂しかった」「自分を見てほしかった」「見捨てられるのが怖かった」のではないでしょうか。

怒りの下にある「弱さや不安」を正しく言語化するトレーニングを行います。

「認知の歪み」を客観視する

自分がどのような場面で「被害妄想」や「〜すべきという押し付け」を行っているか、行動を振り返ったり、記録をノートに書き出すなど可視化していきます。

他者視点(共感性)を育てる

「自分の不機嫌な態度が、相手にどう見えているか」を第三者の視点から考えていきます。

自信の場合に置き換えるとどういった出来事が当てはまるかを考え、疑似体験し想像力を養っていきます。

適切なコミュニケーションを学ぶ

自分の不満をストレートに相手にぶつけるコミュニケーションでも、不機嫌で相手をコントロールするのでもなく、「私はこう感じていて、こうしてもらえると嬉しい」と、相手を尊重しながら自分の気持ちを伝える技術を身につけます。

妻に出ていかれ、一人きりの部屋で涙を流している今のあなたは、間違いなく深い悲しみでとても傷ついておられることでしょう。

そのつらさ自体は本当の気持ちであり、自分が原因だからといって思ってはいけないわけではありません。

ただ、自分が傷付いたのと同じく、妻も傷付き苦しんでいることに目を向けていただきたい。

「妻を取り戻すため」ではなく「これからの自分の生き方を改めるため」に一歩を踏み出してみませんか?

そうして一歩踏み出した先には、妻とまた笑い合っている未来があるかもしれません。

本当の意味で自分を見つめ直し、自分を変えたいと思っておられるのであればカウンセリングでサポートさせていただきます。